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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
3章 王都
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88 歪み

ピエロは王都の市場を歩きながら、今日の獲物を物色していた。


「ん~~~」


視線を泳がせていると、一人の少年が目に留まる。


先ほどアヤと遊んだ後遺症だろうか。今日はどうしても少年を殺したくなっていた。


すれ違いざま、自然な仕草で仕掛けを放つ。

そのまま何事もなかったように遠ざかると――


ズドォォォンッ!!


少年が爆ぜた。


「きゃあああっ!」


轟音と炎に包まれ、市場は一瞬で阿鼻叫喚と化す。


「ん~~~♪」


混乱を背に、ピエロは快感に打ち震えていた。


(こういう殺しも、またいい~~~)


さらに獲物を求めて歩き出す。


しばらく物色していると


「……ん~~~?」


(ひぃ~、ふぅ~、みぃ~……これは~~囲まれていますかね~~?)


気配を探れば、いつの間にか近衛騎士たちが四方を囲んでいる。

今のピエロは、どこにでもいる買い物中の主婦の姿。

正体を見抜かれるはずがない。


(ど~~してバレたんですかね~~?)


とりあえず人混みに紛れ、戦闘になれば一般人を巻き込める状況を維持して様子をうかがう――はずだった。


「動くな」


背後から低い声。

気づけば首筋に、冷たい剣先が触れていた。


「な、なんですかあなたはっ?!」


主婦らしい悲鳴を上げつつも、思考は冷静に巡らせる。


(ど~~いうことですかね~~?一瞬で背後を取られました~~。まるで転移でもしたみたいに~~)


「殺人の容疑で現行犯逮捕する。大人しくしてもらうぞ」


剣を突きつける騎士の声音には、揺るぎない確信があった。


「バレてしまっては、しょうがないですね~~~」


主婦の姿を保ったまま、ピエロの身体が風船のように膨れ上がっていく。

瞬間、剣が閃き――騎士はその首を刎ねた。


だが、異形の膨張は止まらない。皮膚が弾けるように広がり、空気そのものを巻き込んで――


ズドォォォンッ!!


轟音と共に炸裂した爆発の中心に、元の姿で立っていた。

白塗りの顔に赤い唇、滑稽でおぞましい笑みを浮かべたピエロ。


「ん~~~?これは面白いですね~~~」


市場だった場所が、いつの間にか石畳だけの広場へと変貌していた。

周囲の街並みが湾曲し、まるで歪んだ絵画のように遠くへと押しやられている。


「一般人を巻き込む訳にはいかないのでね。空間を広げさせてもらった」


青髪を後ろへ撫でつけた一人の騎士が、悠然と歩み出てくる。鋭い灰色の瞳が、ピエロを射抜く。


「空間の圧縮で距離を詰め、拡張で周囲の人を護ったのですか~~~やりますね~~~」


ピエロは騎士の能力を冷静に分析し、称賛の拍手を叩く。


「あなたが第四近衛騎士団の団長さんですか~~~?」


「いかにも、第四近衛騎士団長ギルバード。参る!」

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