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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
1章 プロローグ
9/72

9 戦いの始まり②

王都へと旅立ったレオとメルは、道中、ルグラン侯爵の邸宅に一泊し、出発の朝を迎えていた。


邸宅の玄関前。爽やかな朝の光が、手入れの行き届いた庭園をやわらかく照らしている。


「ルグラン侯爵、お世話になりました」


「おせわになりました」


二人は丁寧に一礼し、別れの挨拶を述べた。


ルグラン侯爵は口元にうっすらと笑みを浮かべ、ゆったりと頷く。


「うむ。……我が息子も良い刺激となったようだ。その剣も様になっているようだ。王都までの道中、気をつけて行かれよ」


レオはルグラン侯爵から贈られた剣に触れて、感謝を述べる。


「剣、ありがとうございます。ルグラン侯爵にルセリア様のお導きがありますように」


レオが胸に手を当て、女神に祈る。メルもそれを見て、真似する。侯爵はそれを見て、静かに頷く。


二人は馬車に乗り込み、扉が静かに閉まる。護衛と共に馬車は、ゆっくりと走り出した。


ルグラン侯爵の邸宅を背に、二人の旅は再び王都へと向かって進み始める。


 


――だが、静かな時間は長くは続かなかった。


街道に出てしばらく経った頃。


バサッ――!


突如、上空から耳障りな羽音が響き渡った。


「っ……な、ガーゴイルだ!!」


叫んだのは、馬車を護衛していた騎士の一人。


数体の影が空を舞い、馬車の真上をかすめるように飛び交う。すぐに馬車は急停し、騎士たちが剣を抜いて飛び出した。


「なんだよアレ……!」


空には、楕円状の漆黒の穴に、ぐにゃりと歪んだ渦が渦巻いていた。そこから、ガーゴイルが次々と這い出してくる。


レオは馬車から飛び降り、先ほど貰ったばかりの剣を抜き、空を見上げる。


「……アレは、一体……?」


呆然とした声に、馬車の中にいるメルも、不安げな瞳を上げる。


「まさか……空間転移の魔法か!?」


隊長格の騎士が叫び、他の騎士たちの間に動揺が走る。


そして――最後に現れた、二つの気配。


それまでとはまったく異なる、圧倒的な存在感。現れた瞬間、その場の空気が一変した。


「ま、魔族だ!!」


誰かの絶叫が、緊迫した空気をさらに張り詰めさせる。


「あいつかナ? 光ノ女神ノ加護を持った子供ハ」


「――あやつだな」


不気味に歪んだ笑みを浮かべながら、魔族の一人がレオを指差した。


額から突き出た二本の角。青白い肌に、黒く塗りつぶされたような眼球、そこに浮かぶ真紅の瞳孔。――御伽噺でしか見たことのない姿。そのすべてが、魔族の証だった。


「そいじゃあ、オレノ相手ハ……」


「お前ダァ!!」


「――っ!!」


レオに狙いを定め、気づいたときには、すでに目の前にいた。


そのまま拳を振りかぶる。避ける暇もなく、レオは凄まじい力で殴り飛ばされた。


「ぐあっ――!」


地面に叩きつけられ、土煙が上がる。魔族の拳は、まるで軽くあしらうような一撃だった。――それなのに、友から受けた必殺の一撃と、変わらぬ衝撃だった。


「レオ!!」


メルの叫びが、空気を裂いた。


「ハァーハッハッハッハ!!!!」


上機嫌な魔族の笑い声が、戦場に不気味に響き渡る。


「遊び好きめ。ガーゴイルたちよ、騎士どもの相手をしてやれ」


もう一体の魔族が静かに命令を下すと、ガーゴイルたちが一斉に飛び上がり、騎士たちへと突撃する。


同時に、空間が歪み――その周囲に、多種多様な武器が浮かび上がった。


剣、槍、斧、槌、弓――すべてが鋭く輝き、殺意を帯びて宙を舞う。


「さあ、騎士ども。踊り狂いたまえ」


命じる声に合わせるように、無数の武器がガーゴイルと共に襲いかかる。


「くっ――くそ!!」


騎士たちは懸命に応戦するが、数も力も圧倒的。追い詰められるのは時間の問題だった。


土埃の中から、レオが静かに立ち上がる。その瞳が、黄金に輝きだした。

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