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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
3章 王都
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81 悪だくみ

「この王都にはウルトが使えるS級の奴らが最低でも七人います。近衛騎士に三人、宮廷魔導に一人、冒険者ギルドに二人、教会勢力に一人。まったく……多すぎんだよォ!!」


トレイシーが苛立ちを隠せず声を荒げた。だが次の瞬間には、すっと表情を戻し、淡々とした声になる。


「つまり全員を相手にするのは不可能。上手いこと散らしながら、目的を遂行しなければなりません」


「オリサが王宮へ招待されたよ♪」


「そうね。上手いこと利用できればいいわね」


トレイシーにとってオリサは計画の内に入っていない。あくまでもクレイドがリマに授けた策である。


「まずは王都で無差別殺人事件を起こします。これで一人は釣れる。うちの子にやらせるつもりでしたが、ピエロの方が適役でしょう」


「そうだね♪」


「その間にスタンピードを発生させます。モンスターたちが王都に侵入してくれればいいのですが……無理でしょうね。はぁ……」


王都の頑強さを想像して、溜息を吐く。


「スタンピード中にピエロにも暴れてもらいます。強敵な無差別殺人鬼を放置などできないでしょう?」


今度は楽し気に話す。


「最後に囚人たちを脱獄させます。ふふっ、これで王都も混乱の渦に飲まれますね」


トレイシーはそれを想像してご満悦だ。


「それでトレイシーが王宮に潜入だね♪」


リマのその一言にトレイシーは黙り込む。


「……そうね。はぁ……上手くいくかしら?」


一転して、先ほどの高揚感が嘘のように不安げな顔になる。


「それで、俺は何すればいいんだ?」


アヤが静かに問いかける。


「そうねぇ……」


トレイシーが指示を出すより先にリマが答える。


「アヤ兄はわたしと一緒に囚人を脱獄させた後、王宮へ突撃だよ♪」


「あら?そこまでしてくれるの?」


トレイシーは驚きを隠さず、目を丸くした。


「うん♪その隙に潜入してね♪」


「助かるわ」


「王宮へカチコミに行くのか。面白れぇ」


アヤの挑戦的な発言に、トレイシーはふっと目を細めた。

王宮への突撃なんて自殺行為でしかない。それを楽しみにするこの子も狂ってる。トレイシーはそう感じた。


「リマがあなたを気に入った理由がわかったわ」


話がひと段落したその時――


アヤが刀を抜く。


ガキィン!!鋭い金属音が響き渡る。


「誰だお前」


現れたのは、道化の化粧をした男。ステッキでアヤの刀を受け止め、へらへらと不気味な笑みを浮かべる。


「ん~~なかなかやりますねぇ~」


「アヤ兄!そいつがピエロだよ!わたしたちの仲間♪」


「仲間か。侵入者かと思ったぞ」


アヤは大人しく刀を鞘に収める。だが、トレイシーの眉間には深い皺が刻まれていた。


「……ピエロ。まだあなたのこと呼んでないわよ」


「そろそろ呼ばれる気がしたのでね~?」


「はぁ……確かに呼ぼうと思ったところだわ」


「そうでしょうそうでしょう」


うんうんと頷くピエロは、背筋の冷える笑みを浮かべていた。


「あなたにはこれから王都で無差別殺人をしてほしいの。やるでしょ?」


「おぉ!それは最高ですね~。無差別でいいんですねぇ~?」


にやりと不気味に笑う。それに嫌な予感がしたトレイシーが釘を刺す。


「うちの子には手を出さないで」


「おんや~?それじゃあ無差別じゃありませんねぇ~?」


「まったく、あんたは相変わらずうざいわね」


「遊んでくれるんですか~?」


トレイシーとピエロの間に、一触即発の雰囲気が漂う。


「ピエロ、言うこと聞いて!じゃないと――」


「わかっていますよ~少しからかっただけです」


しゅるりと身を引くピエロ。その顔には、やはり不気味な笑みが貼りついたままだった。


「それと、戦神教の奴らにも手を出さないで。使うんだから」


「あの脳筋共ですか~あんなの使えるんですか~?」


「使える物は使うわ」


「そ~ですか~。それにしても滑稽ですね~戦神が何なのか、知らずに崇めるなんてね~?」


ピエロは肩を揺らして笑う。

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