68 リオネルからの知らせ②
「それで、アヤが連れ去られたってどこに?その少女がアヤの妹なのは本当?」
レオが話を戻すように問いかける。
「それが、空間転移で逃げられたのでどこにいるのかは、わかりません」
「空間転移……」
レオが低くつぶやく。
「高度な魔法だ。扱える者は限られる」
クロノアが険しい表情を浮かべる。
「空間転移もしっかり調べれば、どこに行ったのかわかるはず……そうでしたよね?」
セラフィーヌがナズ騎士団長へ視線を送る。
「はい。転移先の特定は可能です」
「それなら追うことができますね」
セラフィーヌの声音には安堵がにじんでいた。
リオネルは、もう一つの疑問に答えるように続ける。
「それと、妹かどうかはわかりませんが、その少女はウルトを使い、アヤを精神支配したようなのです」
「ウルト?」
「??」
レオは目を細め、メルは首を傾げる。
「ウルトはスキルと魔法合わせた究極の力のことだ」
クロノアがレオとメルに説明する。
「ウルトによる精神支配は、ウルトで解くしかありません。……もしくはウルトを使った本人を説得することくらいです」
リオネルはアヤを解放する方法を伝える。
「ウルトか説得するか……か」
レオの表情はさらに険しくなった。
「アヤは無事、なんだよね?」
メルの小さな問いかけに、セラフィーヌが柔らかく応じた。
「メル、この王宮には国一番と名高い占い師がいます。占っていただいたところ……アヤさんはご無事とのことでした」
にこりと微笑んで告げる声に、メルの胸がふっと軽くなる。
「……よかった」
その安堵の吐息に、レオが二人へ視線を向ける。
「つまり、あなたたちはもう知っていたのですね」
「ああ。昨日知ったばかりだ」
クロノアが短く答え、そして言葉を重ねるときには表情を引き締めていた。
「ただし、占いで分かったのは安否だけだ。アヤの居場所までは掴めなかった」
言葉の余韻ののち、彼は真っ直ぐに二人を見据える。
「レオ、メル――アヤを助けたいのなら、ウルトを身に付けるしかない。それも、精神支配を打ち破る類のものをだ」
ウルトを修めることの難しさは、レオにはまだ想像の域に過ぎない。だが、決して容易ではないことだけは分かる。
時間がかかる。その間にアヤの身に何か起こらぬ保証はない。
けれど、当てもなく探しに出るよりは確かな道――。
レオは静かに頷いた。
「……うん。そうだね」
「ウルトを覚えればいいんだね。わたし、がんばる!」
メルは小さな拳をぎゅっと握りしめ、瞳に決意の光を宿した。




