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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
3章 王都
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66 友情の力

「また俺の勝ちだな。レオ」


王宮に住み始めて五日目、レオは毎日クロノア王子と模擬戦をしていた。


息を切らしたレオの木剣が、がらんと地面に転がる。額から汗が滴り、視界が揺れる。


「はぁ…はぁ…強いですね」


「《覚醒(リゾルヴ)》を自在に発動できなければ、クロノア王子には勝てませんよ」


レオを指導するナズ=ナ=レーヴ第五近衛騎士団長が淡々と告げる。


「なかなか難しいですね。追い詰められないとまだ発動できません」


「うーん、模擬戦だから、緊張感が足らないのか?」


クロノア王子が疑問を投げると、ナズは静かに否定した。


「いえ、意志が弱いのです」


「意志?」


ナズはレオの足らない部分を指摘する。


「レオは絶対に勝つという意志が足りません。だから追い詰められないと発動できないのです」


「なるほど、勝利への渇望か」


クロノア王子が納得して頷くが、レオは納得していない。


「僕は、ちゃんと勝つつもりで戦っています!」


鋭く睨み上げるレオに、ナズは落ち着いた口調で話す。


「レオ、勇者を目指すつもりなら、これだけは覚えといてください」


一拍置いて、語りかけるように、重みを込めて言葉を落とした。


「勇者は、どんな敵、どんな状況でも、絶対に負けてはいけないのです。絶対に、です」


その静かな迫力に、レオの喉がひくりと動いた。


「……絶対に」


「ははっ!確かにその通りだ!例え模擬戦だろうと勇者が負けることが、あっていいわけないな!」


クロノア王子が快活な笑い声が、訓練場に響く。


「僕は、そうは思いません」


レオはナズを見上げて反論する。


「何度負けても諦めず立ち上がり、そして最後には、必ず勝つ!……それが真の勇者です」


その信念は――友の、アヤが教えてくれたものだった。


その瞳には強い意志が感じられた。


ナズはしばし彼を見つめ、わずかに表情を緩める。


「それほどの力強い意志があるのなら……《覚醒リゾルヴ》を発動できるはずですよ」


レオは驚いたように目を瞬かせ――やがて、迷いを振り払うように真剣な眼差しを返した。


「……やってみます」


(アヤ。どうか、力を貸して)


いつもなら光の女神ルセリアへ祈っていた少年が、初めて親友へと祈る。


その瞬間、胸の奥から熱がこみ上げた。


「《覚醒リゾルヴ》!」


光が迸り、レオはひとつ、確かに壁を越えた。

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