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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
1章 プロローグ
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7 初依頼②

「ここか。」


依頼主の家に到着して、ドアをノックしようとした――が。


「違う。隣の家だ。」


「……」


「ここか。」


指摘されたアヤは、すました顔で、今度こそ正しい家のドアをノックする。


「おい、間違いをなかったことにしようとするな。」


ジャンサンハ ナニヲ イッテルンダロウ。


アヤはジャンを完全に無視して、依頼主を呼ぶ。


「オリサさーん! いますかー?」


「はぁ……お前はそういう性格か。」


「オリサさーん!」


「はいはい、そんなに呼ばんでも聞こえてるよ。」


ジャンが呆れたように額に手を当ててると、家の中から返事が返ってくる。


出てきたのは――

透き通るような水色に、白髪が混ざった髪。

宝石のような翡翠の瞳が印象的で、皺の目立ち始めた依頼主のオリサだ。


……なのに、背筋はピンと伸びていて、まだまだ元気で活発そうな雰囲気をまとっていた。


「おや、かわいい坊やだね。何の用だい?」


「依頼を受けに来た。」


「依頼?」


依頼票を見せると、それまでの柔らかい笑みが消え、オリサは目を細めて怪訝そうに依頼票を受け取る。


内容に目を通しながら、俺を一瞥。

そして視線は、アヤの後ろに立つジャンさんへと向かった。


「お久しぶりです、オリサさん。」


「この子が、私の依頼を受けるのかい?」


「はい。実力は保証します。とはいえ、まだ子供のため経験不足は否めません。そのために、私が同行します。」


「へぇ……子供とはいえ、ギルドがあんたをつけるなんてねぇ。」


ジャンの丁寧な対応の仕方に、アヤは思わず目を丸くする。

それにジャンとオリサは面識があるようで、オリサからの評価を聞いたアヤは驚く。


(もしやジャンさんってものすごく有能なのでは?エミリさんはジャンさんの扱い雑だったけど、…やっぱあの人すげえな。)


アヤの思考が変な方向に飛んでいる間も、二人のやり取りは続いていた。


「――あんたがつくなら、問題ないだろうね。

でも、今から向かうには時間が遅いね。明日の朝にしようかね。」


「それでは明日、朝の鐘が七つ鳴った頃に正門前に集合でどうでしょう。」


「そうだね。坊や、わかったかい?」


「鐘が七つ鳴る前に、正門にいればいいんだろ。」


「よくわかってるじゃないか。坊や」


オリサさんは安心したように頷く。


(オリサさんは、わざと坊や呼びしてそうだな。こういうのは反応しない方がいいな)


アヤはそう考え、次の話に切り替えた。


「調査って何するんだ?」


「どこに何のモンスターがいるかを調べるのさ。」


オリサさんは軽く言ったが、どうもそれだけではない気がした。


「? それ調べて何になるんだ?」


単なる疑問だったが、オリサさんはにこりと笑って答える。


「それは調べてみないとわからないよ。」


(……これ以上このこと聞いても答えなさそうだな。)


アヤは質問を変えることにした。


「…オリサさんはなんで調査してる?」


「あの遺跡にはね、違和感があるのよ。」


やわらかい表情から、少し遠くを見て思案するように話し出す。


「違和感?」


アヤは思わず聞き返す。何やら面白そうな話の気配がした。


「そう、出てくるモンスターの種類、迷宮の構造、学会のボンクラ共はよくある迷宮型の遺跡ダンジョンと結論付けたがね。――あの遺跡には、何かある。」


言い切ったその声には、自信と、それを上回る確信があった。


「へぇー、面白そうだな!」


アヤの好奇心が刺激される。ロマンはまだあるようだ。


「生意気なガキだと思ったが、話の分かる子だねぇ。」


オリサさんがアヤの頭を撫でまわす。


アヤは抵抗しても無駄なので反応せずに受け入れる。すぐに飽きるだろう。


予想通りすぐに飽きて、それから少し打ち合わせをして、アヤたちは解散した。


報酬は安くても、古代遺跡のダンジョンだ。

胸の奥にワクワクを抱えながら、アヤは眠りについた。


――このとき、誰も知らなかった。

明日、“あんなこと”が起こるなんて。

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