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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
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61 カイザVS

「まさかウルトが使えるとはな」


突然聞こえてきた声にリマは狼狽える。


「誰?!」


――ガシャンッ!!


鎖の牢が一斉に断ち切られ、金属音が響く。


リマの目の前に突如として現れたのは、大剣を担ぐ老人――カイザだ。


「さて、弟子を解放してもらおうか」


低く告げられた言葉に、リマは思わず一歩退く。

しかし――。


「やめろ」


その間に割って入ったのはアヤだった。


「アヤお兄ちゃん!」


リマはぱっと顔を輝かせる。

まるで自身が精神支配をしていることを忘れてるかのように、心底嬉しくて声を弾ませた。


アヤはリマを庇うように前へ立ち塞がり、冷ややかな声で言い放つ。


「妹に、剣を向けないで貰おうか。カイザさん」


アヤはリマを背に隠して庇うように立ち塞がった。


カイザの眉がわずかに動く。

アヤの眼差しには迷いはなく、本気で妹を守ろうとしている。


「なるほど、そういうウルトか」


カイザは小さく息を吐いた。


(アヤの認識は完全に書き換えられておるな。まったく、ウルトによる精神支配というのは、厄介なものだ。術者を殺したところで、解放できるかは分からん。本人に解除させるのが一番手っ取り早いの)


(だが、その前に――)


「アヤ、お主にはまだ師匠らしいことが何も出来ていない。じっくり鍛えるつもりだったが、少し師匠の力を見せてやろう。来い!」


カイザの堂々とした構えに、アヤは一瞬で間合いを詰めて――抜刀


横薙ぎ一閃


鍛冶屋で見せた見事な抜刀術だが、カイザは滑るように、体を回転させて受け流した。


そのまま、返す刀で手刀を繰り出す。


「ガッ!!」


乾いた衝撃音とともに、アヤの首筋に命中。

アヤはその場に崩れ落ち、意識を刈り取られた。


カイザがアヤと戦っている間に、リマは準備していたウルトを発動する。


「あなたは私のお爺ちゃんだよ!ウルト【二人の絆(ラブリーチェイン)】」


またもやリマの胸からカイザの胸元に鎖が突然現れる。


だが、鎖はカイザの胸から滑り落ちた。


「え?絶対当たるのに、なんで?!」


リマの瞳に、初めて困惑の色が宿る。

カイザはゆっくりと立ち上がり、淡々と答えた。


「ウルトにはウルトで対処したまでだ。儂のウルト【回避の極意(ディフレクトワード)】、全てを受け流す絶対防御で、お主の鎖は儂と繋がらぬ」


リマは言葉を失う。

カイザの声音には揺るがぬ自信が滲み、重圧が空気を支配した。


「さて、あまり手荒なことはしたくない。アヤを解放してもらおうか」


その時だった。

リマの背後――空間が揺らめき、黒い靄のように歪む。


(……空間転移!?)


カイザは即座に気配を察知し、大剣を握り直す。

最大限の警戒を込めた視線の先から、ゆらりとローブ姿の人影が現れた。


「おや?娘を迎いに来たのですが、これはどういう状況ですかね?」


「パパ!」


リマが無防備に振り返り、明るい声が響く。


フードを被り、認識阻害の力で顔の部分は闇に包まれて見えないが、そのローブには見覚えがあり、そして聞き覚えのある声――


「貴様は……クレイドか?!」


「おやおや。お久しぶりですね。カイザさん」


次の瞬間、カイザの巨体が疾風のように間合いを詰めていた。

振り下ろされた大剣が空気を裂き――。


ドガァン!!


クレイドは杖で受け止める。凄まじい轟音と衝撃が、周囲に響き渡たった。


「ふふっ、いきなりですね」


「黙れ。貴様は――死ねッ!!」


カイザの怒声には、深い憎悪と長年の怨嗟が滲んでいた。

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