表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
61/92

58 待ち構える者

一行は廃都エルディアに到着した。


「あの爺さん、あそこから敵を見つけたのかよ。だいぶ走ったぞ」


「さすがは元グランドマスターといったところです」


アヤはカイザの規格外ぶりに舌を巻き、ノーラは素直に感心する。


その時、不意にカイザの声が響いた。


「……敵がお主たちの接近に気づいたようだな。だが、逃げるつもりはない。二手に分かれる意味はなさそうだ」


「声まで飛ばせるのかよ。なんでもありだな」


アヤが呆れた声を出す。


「それより、急ぎましょう!中心部へ真っすぐ!」


ノーラの号令で、一行は廃都を駆け抜けた。崩れた街並みを突っ切り、ひび割れた石畳を踏みしめて進む。


(ここが俺の故郷か……)


アヤはエルディアに生まれ、すぐに事件が起こり、孤児となった。当時の記憶はない。


周囲を観察しながら、走っていると、やがて開けた中央広場にたどり着く。そこには――待ち構えるように仁王立ちする影があった。


ボロ布のようなローブを羽織り、深く被ったフードに顔は沈み、闇に溶けて見えない。背丈はアヤと同じくらい。


「我々はアメリオ王国の騎士! 名を名乗れ! ここで何をしている!」


まだ敵と断定できぬため、ノーラは威厳を込めて問う。


「……ふふっ♪」


返ってきたのは、幼い少女のような声と不気味な笑み。言葉はない。


ノーラがさらに踏み出そうとした瞬間――。


ローブの袖から閃光のように鞭が伸びた。予備動作すらなく、風を裂いてノーラに迫る。


「っ!」


彼女は盾を構え、受け止める。


「捕えよ!」


ノーラの声が戦闘開始の合図となり、アヤが誰よりも早く駆け出す。


しなる鞭がアヤを狙う。しかし――


「《ノック》」


一閃。拳の衝撃で鞭を弾き飛ばす。アヤは刀を抜かず、拳で敵の頭上から叩きつけた。


轟音。拳が地面を砕き、石片が舞い上がる。


「あはっ☆」


「君、強いねぇ♪」


敵は楽しげに、アヤに話しかける。


そこへ二人の騎士が左右から同時に斬りかかる。しかし相手は軽やかに舞い上がり、剣の間をすり抜ける。


回避と同時に、ローブの袖から二本の鞭が伸び、騎士たちに襲いかかった。


「《娘のお願い《ラブリーキュート》》!」


全身鎧の騎士は兜を打たれ、軽装の騎士は顔を直撃される。


「邪魔しないで!」


甲高い声が響き、顔を打たれた騎士の目が虚ろになる。


「……わかった」


精神をねじ曲げられ、敵に従ってしまった。


「あなたは指揮官に突撃しなさい」


操られた騎士がノーラに刃を向ける。副官が慌ててそれを受け止めた。


「鞭を直接食らうな! 精神を侵されるぞ!」


「アースロック!」「エアロック!」


騎士の魔術が次々と放たれ、石の拘束や風の檻が敵を取り囲む。だが――


「くだらないっ」


少女の声が弾けると同時に、術式が粉砕される。


「その程度で拘束できるわけないでしょ。本物の拘束魔法を見せてあげる――《チェインジェイル》!」


ジャラリ、と耳障りな音を立てて無数の鎖が虚空から伸び、アヤを除いた騎士たちを絡め取ろうと襲いかかった。


「これで遊べるね♪」


フードを取り、可愛らしい灰色の肌の少女の素顔が現れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ