57 エルディアへ
騎士たちの人選が終わり、六人の騎士たちがカイザの元へと集う。
「揃ったな。では向かうぞ」
カイザが号令をかけると、一人の女性騎士が前に出て口を開く。
「カイザ殿、向かう前に一つよろしいでしょうか」
「む?なんだ」
「カイザ殿とアヤ殿はあくまで、協力者です。犯人確保の指揮権は、今回隊長を任命された私、ノーラにあります」
「ふっ、そうだな」
「……申し訳ございません。カイザ殿」
「謝る必要はない。お互いに立場というものがあるからな」
「……感謝いたします。それでは、全員――エルディアへ!」
一行はエルディアへと走り出した。
その道すがら、ノーラがアヤに声をかける。
「アヤくん」
「ん?」
「あまり無茶はしないでね。メルちゃんを悲しませちゃダメだからね」
アヤが目を瞬かせる。
「メルのこと知ってるのか?」
ノーラは小さく頷き、前を見据えたまま言葉を続けた。
「君は覚えてないだろうけど、レオくんとメルちゃんを王都まで護衛するために、エルナの町の孤児院まで迎えに行った騎士の一人よ」
「そうだったのか」
「ええ、魔族に襲撃されて、レオくんとメルちゃんの力のおかげでなんとかなったけど、護衛対象に戦わてしまった。護衛失格ね」
その声音には、今もなお拭えない悔恨が滲んでいた。
「ん?メルも戦ったのか?」
アヤからの疑問に、ノーラはあの日のことを思い出す。
「……ええ、といっても、メルちゃんが何をしたのか、よくわかってないのだけれど」
「よくわかってない?」
「止まれ!」
カイザの鋭い声が響き、一行の足が止まる。
ノーラが身を翻して問う。
「どうしましたか?」
「エルディアに人影を確認した。一人のようだ」
「人影って、この距離で、ですか?」
まだ町影すら見えぬ街道。ノーラは信じられない思いで聞く。
「うむ。街の中心部におる。儂は上空へ飛び、監視する。何かあれば知らせよう。それでよろしいか?隊長殿」
「……わかりました。お願いします」
カイザは地を蹴ったかと思うと、軽々と空へ舞い上がる。
そのまま風に溶けるように姿を霞ませ、上空のどこかに消えた。
それを見送ったノーラが小さく息を吐く。
「斥候を出す必要がなくなりましたね……」
彼女は気を引き締め直し、振り返って声を張った。
「私たちはこのまま進み、街に入ります。そこから二手に分かれて挟み込みます――行きますよ!」
アヤと騎士たちが一斉に頷き、走り出す。




