6 初依頼①
「…あれ? 護衛依頼、受けられるじゃん。」
冒険者ギルドカードを受け取ったアヤは、さっそく自身が受けられる依頼を確認している。
「護衛補佐だ、少年。
護衛依頼を受けたCランク以上の冒険者のサポート――まあ、つまり雑用係だな。」
後ろからついてきたジャンが、ぽつりと説明を入れる。
ガロスから、アヤの面倒を見るように言われているらしい。
「Cランクへの昇級を目指すなら、護衛補佐は何度か経験しておいたほうがいい。
……それより、少年はパーティには入らないのか?」
「一人でやるよ。」
(パーティを組むなら、あの二人がいいからな。)
「お。古代遺跡ダンジョンのモンスター討伐に……調査支援もあるな。面白そうだ!」
“ダンジョン”――その言葉だけで、アヤのテンションが上がる。
しかも古代遺跡。ロマンの塊だ。
「あぁ、この町で唯一のダンジョンなんだが、探索し尽くされてて、ほとんど価値のないダンジョンさ。」
「え。」
「遺跡としての歴史的価値も薄いらしい。」
「そうなのか……」
アヤの上がったテンションは急降下。ロマンもどこかへ行ってしまった。
「ん? でも調査支援の依頼、あるよ?」
「それは、遺跡に興味を持ってる学者個人の依頼だな。」
「へー……もしかして、この報酬って安い?」
アヤは、他の依頼の報酬額と見比べていると、明らかにその調査支援は安く感じられた。
「ああ、激安だ。」
(安いのか。……でも古代遺跡ダンジョンは、やっぱり気になる。モンスター討伐でもダンジョンにはいけるけど、調査支援のが面白そうな話とか聞けそうだな。)
「んーー、よし! この依頼、受ける!」
「まあ、古代遺跡ダンジョンって聞いて、気にならない冒険者はいないよな。」
「決まったなら、その依頼票を受付に持っていけ。受領されたら、依頼主のところに行くぞ。」
「うん!」
テンションが上がりすぎて、いつもかっこつけているアヤの、素である子供っぽい部分が出てしまっていた。
◇ ◇ ◇
「はーい、依頼ですねー。
それじゃあ、ジャンさん、ギルドカード出してください。」
「エミリ。俺じゃなく、少年の依頼だ。」
「もう、冗談ですよ。
それに“少年”じゃなくて、“アヤくん”でしょ。
アヤくん、依頼票と一緒にギルドカードも出すんだよ?
ジャンさんは、ちゃんと教えてあげてくださいね?」
「わかったわかった。」
「返事は一回でいいんですよ。まったく。」
(……このギルド、もしかしてエミリさんがトップなんじゃ?)
さっき発行されたばかりのギルドカードを渡しながら、
そんな邪推をしてしまうほどに、この人は強いと感じたアヤ。
こういう強さもあるのか、と感心してしまう。
「それじゃ、ちょっと待っててね。えーっと……はい、これで受領できたよ。
依頼、頑張ってね!」
アヤとジャンはギルドを出て、依頼主の元へ向かった。
「まったく、新人の教育はどうなってる。」
「?」
「ああ、エミリは新人の受付嬢なんだよ。」
「え?」
(新…人…?)
――今日一番の驚きであった。