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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
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50 救出

「クーちゃん」


目を覚ました小柄なエルフは霊鳥の首元に手を伸ばし、ふわりと撫でた。温かな羽毛が指先に触れる。


「クルルルゥ」


霊鳥も嬉しそうに小さく鳴く。まるで甘えるように翼を震わせる。


エルフは上半身を起こし、きょろきょろと周囲を見回す。


視線が近くにいたエルフに止まり、問いかけた。


「えっと、ここは?」


「この人たちが助けてくださったのですよ」


エルフはにこりと微笑んで答える。


「助けてくださり、ありがとうございます」


カイザに向かってお礼を述べる。


「たまたま通りがかっただけです」


カイザがエルフたちの手錠を外しながら、応える。


アヤは二人のやり取りに口を挟まず、霊鳥へと向き直る。


「さっきは悪かったな。鳥」


「クルルルゥ!」


翼をバサッと広げて、応えた。どうやら謝罪を受け入れてくれたようだ。


「クーちゃん、何かされたの?」


そのやり取りを見ていた小柄なエルフが霊鳥に聞くと、カイザが口を開く。


「その霊鳥が人を襲っていたので、そやつが早とちりして霊鳥に攻撃したのですよ」


「カイザさんも魔法で拘束しただろ?」


アヤは眉をひそめ、口をとがらせて反論する。


「そうだな。霊鳥よ。すまんかった」


カイザが素直に謝ると、霊鳥は翼を広げて鳴いた。


「クルルルゥ!」


「ふふっ、クーちゃんは許してくれるみたいです」


エルフは胸を撫で下ろし、霊鳥の首元に顔を寄せる。


「ぐっ」


倒れていた男の一人が低くうめき声をあげ、もぞりと身じろぎした。


アヤは瞬時に足を踏み出し、その背中を強く踏みつけた。


「動くな」


「がはっ!」


苦悶の声とともに、男の身体から力が抜けた。


「くそっ……フェニックスなんかに邪魔されなきゃ……」


声はかすれていたが、その言葉には悔しさと憎しみが混じっていた。


(やっぱりフェニックスなのか。もっと燃えるような赤だと思ってたが、こいつは緑色だ)


アヤはちらりと霊鳥を見やり、その鮮やかな翡翠色の羽毛を目に留めた。


「さて、そ奴らに聞きたいことがある」


カイザはエルフたちの手錠が外し終わったのか、アヤが踏みつけた男に近づく。


「何聞くんだ?」


「ゴブリンのことだ」


思わぬ単語に、アヤは眉を上げる。


「ゴブリン?」


「そうだ。話は儂が聞いておく。アヤは街に戻って王国の騎士団を連れてきてくれ。これを見せれば話は通る」


カイザは首から外したネックレスを差し出した。


アヤはそれを受け取り、短くうなずく。


(俺も話を聞きたかったが、仕方ないか)


「……わかった」


アヤは了承して、街へ向けて走り出した。

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