48 不穏
「はぁ、結局ボロ服のままだな」
歩きながら、カイザが半眼でアヤの服を見やる。
「いいだろ別に」
アヤは気にも留めず、肩をすくめた。
「いい訳なかろう?武器にも効果や相性があるように、服にもあるんだ」
「あぁ、そっか。ま、今度買うさ」
軽く答えるアヤに、カイザは小さく鼻を鳴らす。
「……アヤ、お主先ほど刀を初めて見て、あれができたであろう?」
カイザは試し斬りをしたアヤの動きを思い出して話し出す。
(これは、疑われているか?)
アヤは視線を逸らし、前を見て短く相槌を打つ。
「……うん」
「もしかしてお主、初めての武器でも巧く操る能力を持っているんじゃないか?」
その問いに、アヤは内心で安堵する。
「そういうスキルもあるのか」
「あぁ、生まれ持った才能による能力を持っている者もいる。鍛え上げた技とはまた別の力だな」
「へぇー、なるほどね」
やがて二人は正門前に差し掛かった。
門の前は、鎧姿の騎士たちが慌ただしく行き交い、緊張感のある空気に包まれている。
「騒がしいな」
アヤが辺りを見回すと、カイザが近くの騎士に声をかけた。
「何があった」
「カイザさんですか。いえ、ゴブリンの目撃情報があり、捜索及び討伐隊です」
騎士は、カイザの顔を知っているらしく、敬意を込めて答える。
「またか。最近多いな」
「はい。原因の調査もする予定です」
「目撃情報はどっちだ?」
「北側です」
「そうか。わかった。儂らは南側で狩りをしよう」
「助かります。お気をつけて」
騎士に軽くうなずき、カイザは街の外へと歩き出す。
「手伝わなくていいの?」
アヤが横目で問うと、カイザは淡々と答えた。
「王国騎士団の仕事だ。協力要請があった訳ではない。それにたかがゴブリンだ。儂がわざわざ出向く必要はあるまい」
「ふーん。そういうもんなのか」
「そういうものだ。行くぞ」
城門を離れながら、アヤは先ほど集結していた騎士の数を思い出して首をひねった。
「それにしても、そのたかがゴブリンに対しての人数多かったな」
「最悪の場合も想定した人数であろう」
「最悪の場合って?」
「魔族が絡んでいる可能性だ」
アヤは眉を上げ、すぐに口を開いた。
「ん?それならカイザさんも行った方がいいんじゃ?」
「儂はあくまで保険だ。基本的には現役の者たちが対処した方が良い」
「なるほどな」
アヤは小さく頷き、カイザの後をついて行く。




