45 アヤの装備
アレンたちとの仕事を終えた翌日――。
アヤがギルドに足を踏み入れると、入口近くで腕を組んだジャンが待ち構えていた。
「来たなアヤ。魔族撃退の報酬が出た。受け取りにいってくれ」
「出たのか。わかった」
カウンターで手続きを済ませ、ずしりと重い革袋を受け取る。
中を覗くと、金貨三十枚がぎっしり詰まっていた。
「その報酬あれば、そのボロボロの服も買い替えれるな」
ジャンがアヤが着てる服を見て言及する。
「……そうだな」
「買い物には着いて行けないが、カイザさんのとこに行って、装備の相談するといい」
「それもそうだな。行ってくる」
ジャンの提案に頷き、アヤはカイザの元へと向かう。
カイザが滞在している宿は、この街でも随一の高級宿だ。
外観は冒険者ギルド並みに大きく、扉をくぐれば、広々としたロビーに高級感がある。
受付でカイザの部屋を尋ねると、名前と要件を聞かれて、従業員が確認に向かう。
ほどなくして、階段からカイザが降りてきた。
「待たせたな。それで、装備を買うんだったな。よし、行くぞ」
アヤの返事を待たずに、すたすたと宿の外へ。
アヤは慌てて後を追う。
「この街で装備を買うなら、いい店がある」
カイザが上機嫌に話しながら歩く。
やがて足を止め、大槌の看板を掲げた小さな建物を顎で示した。
「ここはこの街唯一のドワーフの店だ」
中に入ると、意外にもこじんまりとした造りで、壁には武具が整然と並んでいる。
出迎えたのは、人間のおばさんだった。
「いらっしゃい。何をお探しだい?」
「こやつの防具を買いに来た。……武器はどうするんだ?」
カイザがアヤの頭に手を乗せて聞く。
そんなアヤは、おばさんの後ろに飾られている一つの武器に、目が釘付けになっていた。
「おばさん、その武器見せて!」
アヤが興奮して指を指す。
「おや?この武器かい?」
おばさんが振り向いて手に持って見せる。
「そう!それ!」
「ふむ。ヒノ国の剣か」
カイザがその武器を見て呟いた。
「そうだよ。剣じゃなくて刀っていうやつさ。見せるのは構わないが、これは金貨三十枚もするからね。持たせることはできないよ」
「金貨三十枚?!買う!」
アヤの即断即決に、カイザとおばさんは目を丸くした。
「お主、それ全財産じゃないのか?たしか魔族撃退の報酬がそのくらいだったであろう?」
「え?何で知ってるの?」
アヤはまだ、カイザに持ち金を話していないので、疑問を口にする。
「国と冒険者ギルドで、あの報酬の話の時に儂もいたからの」
「あぁ。そういうことか」
「そんなことはどうでもよい。その武器以外何も買えなくなるぞ」
「また稼げばいい」
アヤはあっさり言い切り、金貨の入った袋を取り出してカウンターに置く。
「はい。金貨三十枚」
「ちょっと待ちな。金貨三十枚なんてでかい買い物だ。そんな簡単に決めていいものじゃないよ」
「そうだぞ。買うにしても、その武器がどういった特性があるのか。試し斬りくらいはせよ」
おばさんが止めて、カイザがそれに続く。
アヤがむっとした顔をして頼む。
「……それじゃ、試し斬りしたい」




