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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
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43 セラフィーヌ

「お兄さま、頭を二度も打たれたのですから、今日はこれでお開きにして治療を受けましょう?」


セラフィーヌは、この場は早々に解散した方がよいと思い、強引にお開きにするために口を開く。


「む。そう、だな」


「えっと、大丈夫?」


模擬戦とはいえ、メルが二度もクロノアの頭に木剣を叩きこんでしまったのだ。


罪悪感から、心配せずにはいられなかった。


「大丈夫ですよメルさん。こうしてお兄さまは立っていますので、ただ少し休息は必要というだけですわ」


セラフィーヌがすかさずフォローする。早くお開きにしたいがために言ったが、先ほどの言い方ではメルを悪者みたいになってしまった。


配慮に欠けてしまったことに反省しつつ、メルの印象が悪くならないように、注意しながら言葉を選ぶ。


「う、うん」


セラフィーヌはにっこりと笑ってメルに答えていたが、その笑顔に圧のようなものを感じたメルは大人しく下がる。


「それでは皆さん。くれぐれも品位に欠けるようなことは口にしないよう、お願い致しますね」


セラフィーヌが訓練場にいた者たちに、笑顔でお願いをする。


騎士たちはその何とも言えぬ笑顔の圧に、王族の威厳を感じた。


あれでまだ六歳の少女だと言うのだから驚きである。


お茶会改め、模擬戦を終えて、自室に戻ったセラフィーヌは、一息つく間もなく、動き始める。


「お母さまに面会希望を出して!」


「かしこまりました」


「それと、あの場にいた人たちを全員洗い出しといて!」


自身の従者に次々と命令を下し、この後どう動くかを思案する。


「姫様、少し落ち着いてはいかが?お茶を入れますので、お座りになってお待ちください」


「……そうね」


椅子に座り、先ほどの出来事を思い出す。


訓練場にいた者たちには、王族の圧による口止めをしたが、それがどの程度の効力になるのか。


セラフィーヌ自身には判断ができない。


少しでも遅れれば、誰かの口から外へ漏れる。そうなれば面倒なことになる。


そして、これから問題となるであろう、兄であるクロノアのことを思う。


クロノアは天才と称されている。それは戦闘だけではなく、勉学に置いてもその天才さを発揮していた。


そんな兄が、まさか考えなしに求婚をするなどと、誰が想像するだろう。


何者かに操られていると思っても不思議ではない。


しかし、あの場にはあの、ナズ=ナ=レーヴ騎士団長がいたのだ。それはないだろう。


(それでも……一応確認した方がいいのかしら)


ナズ騎士団長への確認、専門家によるさりげない診察――


思いついたことを順に従者へと指示していく。


落ち着いて状況を整理したことで、次に取るべき手が、はっきりと見えてきた。


だがしかし、この時はこの思いつきが、数年後の魔法学園で、あらぬ誤解を生むことになるとは、思いもしなかった。

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