4 冒険者登録①
別れの日――
まだ陽も高くない早朝、俺たちは孤児院の前で最後の別れを交わしていた。
「う、ううぅ……アヤぁ……!」
メルが顔をくしゃくしゃにして泣いている。声も、涙も、抑えが効かなくなっていた。
「そんなに泣くなよ。どうせまた会えるんだしさ。約束したろ?」
「……うん。」
「約束忘れないでね!」
メルは涙の中で必死に言った。
俺は涙を堪えつつ頷き、手を差し出した。
「――あぁ、もちろんだ。」
ちいさな手と手が、ぎゅっと結ばれた。
「レオ、次会うときはとっておきを見せてやる」
「それ、まだ未完成のやつでしょ?」
「次会うときにはできてる」
「楽しみにしてるよ」
「メルを頼んだぞ。またな」
「任せて。アヤにルセリア様のお導きがありますように」
そう言って、二人は馬車へと乗り込んだ。だんだんと遠ざかっていくのをアヤは黙って眺めていた。
馬車が見えなくなると、アヤは歩き出す。
涙を拭い、孤児院を出て、目指すは、町の冒険者ギルド。
七歳の子供でも、加護の儀を終えた者なら簡易登録が可能だ。子供でもできる雑用仕事があるらしい。
ギルドの扉を開けると、朝の陽射しが差し込む中、カウンターの奥で女性職員と目が合い、元気はつらつに話し始める。
「エルナ冒険者ギルドへようこそ!冒険者登録?それとも依頼かな?」
「冒険者登録をしにきた。」
「冒険者登録ね。それじゃあこの書類に記入してほしいんだけど、文字は書ける?」
「書けるよ。」
「えらいね~。それじゃあお願い。」
手渡された書類とペンを受け取り、俺は静かに書き始めた。読み書きは孤児院で教わったので問題なく書き終える。
「……はい。」
職員がそれを受け取り、目を通しながら微笑んだ。
「うん。全部書けてる。えっと次は、この水晶に手を置いて質問をするから、はいって答えてね。」
アヤは言われるがままに出された水晶に手を置いた。
「書いた内容に噓偽りはありませんか。」
「はい。」
言われたとおりに答えると水晶が白く光る。
「白いから大丈夫だね。それじゃあこの後簡単な試験するから訓練場で待ってて。」
「わかった。」
水晶が反応した時、アヤは変に焦ったが、特に問題なくてほっとしていた。
訓練場に向かい、しばらく待ってると、やってきたのは、浅黒い肌に鋭い眼光を宿した男だ。
「この子が新人か?」
受付の女性が頷く。
「はい、ジャンさん。試験お願いしますね。」
「了解。」
男は無骨に頷くと、アヤの前に立ち、顎を軽くしゃくった。
「俺が試験官のジャンだ。試験といっても難しいもんじゃない。一つ目は単純だ。あそこにある壁を攻撃してみな。」
視線の先には、白い壁があった。魔法陣の紋様がうっすらと浮かんでいる。
「武器は自由に使っていい。……といっても、何も持ってないようだな。貸そうか?」
「いや、いらない。」
アヤは小さく首を振った。
ジャンは眉を上げてから、肩をすくめた。
「そうか。なら好きにやってみな。ちなみにこの壁、攻撃を受けると色が変わる仕組みになってる。その色で、君の攻撃力が判定できる。」
アヤは壁に目を向ける。
「この壁、壊れても問題ないの?」
その言葉に、ジャンが一拍置いてから吹き出した。
「壁を壊す?はっはっは! そんなことができるのは、Sランクレベルだ。まぁ安心しな。自動修復の魔法がかかってる。壊せるもんなら、壊してみな。」
アヤは静かに構えを取った。
「わかった。」
「ノック」
次の瞬間、轟音と共に壁は壊れた。