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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
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36 ゴブリンという存在

「エミリさんは、ここに来てたったの五日のはず……何したんだ?」


アヤの疑問にアレンが答える。


「ん~、なんかお偉いさんたちを顎で使ってるんだって」


(顎……カイザさんもお爺ちゃん扱いしてたしな)


納得はできるが、もう既にこの街の首領(ドン)みたいな扱いになってることにアヤは驚愕した。


「よし、んじゃ、次の荷だ。持てる分だけでいいぞー」


職員の掛け声に、アヤは木箱二つを軽々と持ち上げた。


「おいおい、冗談だろ。そっち十キロはあるぞ?」


「うん。まだいけるけど、こんくらいでいい?」


「ああ、うん……うん。」


二台の荷馬車に積み込み終わると、アレンたちは二手に分かれて荷台に乗る。


アヤはアレンと共に乗り、雑談した。


「そういや、アヤは知ってるか?」


「ん?」


「この前出た魔族を、俺たちくらいの子供が倒したってやつ。どんなやつか気にならないか?」


(魔族を倒したってことは……)


「……レオのことか?」


アヤ自身は魔族を倒してない。倒したってことはレオのことだろうと思い、親友の名を出す。


「レオ?誰だ?」


「俺の親友だ。エルナの町の孤児院で一緒に過ごしてたんだ」


アヤが思い出すように話す。


「あぁ、アヤはあの町の生き残りだったのか。どおりで俺が知らなかったわけだ」


アレンが納得顔でうんうんと頷く。


たわいもない話をしてるうちに、一行は商業ギルドの搬入口に到着した。


「おーし、チビッ子ども、荷下ろしだ! こっちで受け取るぞー!」


アヤとアレンたちが荷を降ろし始めると、商業ギルドから出てきた大人たちの話が聞こえてくる。


「聞いたか?ゴブリンが出たって――」


(ゴブリン?)


アヤは手にした木箱を抱え直しながら、何気なく隣のアレンに問いかけた。


「なぁアレン、ゴブリンって珍しいのか?」


「よっと、ゴブリン?そりゃ珍しいだろ」


アレンは荷物を下ろしながら応える。


「ふーん、そうなのか」


アヤが素っ気なく返したことに、アレンは違和感を感じて教える。


「なんだ知らないのか?ゴブリンは見かけたらさっさとやつけなきゃいけないんだぞ」


「なんで?」


アレンは呆れ顔でこちらを向いた。


「アヤは勇者と魔王の御伽噺を聞いたことないのか?ゴブリンが進化の果てに魔族になる話」


「あぁ……そういえば……」


アヤはシスター・クレイシアが、孤児院で読み聞かせをしていた話を思い出す。


「魔族なんてそう簡単にはなれないらしいけど、他にも厄介なモンスターに進化するから、ゴブリンを放置するのは危険なんだ」


アレンは言いながら、荷物をもう一つ担ぐ。


「なるほどな……」


「冒険者の常識だぞ?ちゃんと覚えておけよな」


「……あぁ、わかった」


アヤは魔族バラガンのことを思い出していた。


(あの凶悪な存在も元は、ただのゴブリンだったってことなのか……)


荷を降ろし終えると、一行は冒険者ギルドへ戻った。


荷車の片付けを終えたところで、ちょうど昼時となっていた。


職員の「休憩だぞー」という声に誘われて、アヤとアレンたちは、ギルド併設の小さな食堂へ向かう。


昼食を食べながら、アレンがこの後のことをアヤに教える。


「この後は、素材の仕分けか解体の手伝いだけど、暇だと訓練ができるんだ」


「なるほどな」


アヤは素直に頷いて、この後の仕事に思いを馳せる。

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