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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
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34 魔族バラガンと

とある古城跡――。


魔族バラガンは、すっかり癒えた傷の確認をするように、廊下をゆっくりと歩いていた。だが、ふと足を止め、目の前の人物を睨みつける。


「ちっ!おい、ガラン!」


そこには、レオと騎士たちによって倒されたはずの、あの魔族ガランだった。


「オや?バラガンじゃナいか。生きテたノか」


「人形風情が、俺様の名前を呼ぶんじゃねぇ!」


「クックックッ!ジャあナんト呼べバ?タだノ子供(ガキ)に負ケたゴミと呼ンだ方がイいか?」


「貴様っ!!!!」


バラガンの背にある炎の翼が、怒りと共に激しく燃え上がる。


「奴に止めを刺した!!貴様らこそ!勇者の卵を殺し損ねておいて!何を言う!!!!」


「ハハハハハハッ!!残念ダが、あノ子供(ガキ)は生キているゾ?」


「何っ?!」


「そレに、おイラたちノ相手ハただノ子供(ガキ)じゃナかッたのデネ。ゴミと一緒ニしなイでほシイネ」


「焼却処分されたいようだな!!!!」


激昂したバラガンが、両手に炎を集め始めた――だがその瞬間、彼の体が不自然に硬直する。


「ちょっとぉ~やめてよね!僕の人形(ガラン)を壊そうとするのは!」


灰色の肌、小柄で可愛らしい――それでいて性別不詳の奇妙な存在が、廊下の奥から現れる。その姿を見たガランが即座に跪いた。


「マイマスター。お騒がセしテ、すイまセん」


「ホムンクルスッ!!!さっさとこれを解け!!」


「はぁ~、僕にはワーウっていう名前があるんだよ!」


ワーウは不満げに唇を尖らせながら、指先をひらりと動かす。


「ぐがっ……!」


バラガンの拘束が、きつく締め付ける。


「はっはっはっはっ!どうだ!」


ワーウが腰に手を当てて得意げに言う。


「素晴らシいでス。マイマスター。しかし、バラガンを殺してしまウと、アの方が――お怒リになられマス」


「……そうだったっけ?」


恭しく進言するガランに、ワーウが小さく首を傾げながら、バラガンへの攻撃をやめる。


「くっ……!はぁ…はぁ……」


解放されたバラガンは、肩で息をしながら睨みつける。


「今度からちゃんと名前で呼ぶように!それと、人形(ガラン)にも手を出さないで!」


ワーウは指を突きつけて命令した。


(くそっ……魔族になった、この俺が……!人造人間(ホムンクルス)ごときに、やられ……! そのガラン(人形)に、馬鹿にされる……!? くそっ、くそっ!!)


怒りをなんとか押し殺しながら、バラガンは問いただす。


「……ふぅー、ふぅー……ワーウ。奴は……どこにいる?」


名前を呼ばれたことで、ワーウは満足げに頷く。


「奴?クレイドのこと?」


「ああ。今どこにいる?」


ワーウは人差し指を唇に当てて、んーっと小さく唸る。


「どこだっけ?」


すぐ隣で控えていたガランが、無表情のまま口を開いた。


「帝国で、探し物をしテいるトの報告デス。マイマスター」


「……ああ、そうだったそうだった~」


ワーウはコロコロと笑いながら頷くと、踵を返して軽やかに廊下を進んでいった。

ガランもすぐにその後に続き、廊下の奥へと姿を消していく。


その場に残されたバラガンは、なおも怒りの余熱を燻らせながら、拳をきつく握りしめていた。


(……次は、必ず。俺の手で焼き尽くしてやる……!)


静寂に包まれた古城の廊下に、魔族の執念だけが、燃え残っていた。

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