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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
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33 ウルト

カイザは腕を組み、アヤをじっと見据えた。


「それとアヤ、お主は、魔術か魔法は使えるのか?」


突然の問いに、アヤは小さくうなずく。


「火の魔法が使えるようになった」


その答えに、カイザの眉がわずかに上がる。


「使えるようになった? ……まぁよい」


あっさりと流すと、カイザは話を続けた。


「モンスターには、魔法が効きやすく、スキルが効きにくいのがいる。もちろん、その逆もいる。相手に合わせて、魔法で攻撃するか、スキルで攻撃するかを見極める必要がある」


真剣な口調に、アヤも自然と背筋を伸ばして返す。


「なるほど」


カイザは一歩近づき、声を低めて語る。


「もっと細かく言えば、魂の力が効きづらくて、火の魔法も効きづらいモンスターもいる」


思わずアヤが聞き返す。


「そうなの?」


「あぁ。とはいえ、効きづらくてもユニークスキルなら、力押しで倒すことはできるが、そういったモンスターがいることは覚えておけ」


アヤは興味深そうに首を傾げた。


「ちなみに、どんなモンスター?」


カイザはしばし思案し、顎に手を添える。


「儂が思いつくのは――マグマスライムだな」


その名前に、アヤは思わず声を漏らした。


「へぇー、マグマスライムか……」


アヤは腕を組みながら小さくうなずく。聞いたことのない名前に、好奇心がくすぐられた。


「さて――ここからが本題だ」


 カイザの声音が一段階低くなる。


「ソロでSランク冒険者になるには、ユニークスキルを身につけること。そして、もう一つ。魔法とスキルの合わせ技である【ウルト】を習得することだ」


「ウルト?」


 アヤは眉を上げる。聞きなれない単語だった。


「あぁ。どんなモンスターにも通用する、究極の力。Sランクの称号に相応しい力だ」


「究極の力か。いいね!」


 アヤは無邪気に笑って、拳を軽く握りしめた。


「お主、わかっているのか? 魔法とスキルを同時に発動して合わせるということが、如何に難しいか」


カイザの目が鋭くなる。アヤはその言葉を聞いて考える。


「……あれ? そんなことほんとにできんの?」


「気づいたか」


カイザはゆっくりとうなずく。


「そう。魔法は、魔力を変質させて使う。スキルは、魔力を使って、それ以外の力に干渉する。つまり――魔力を変質させながら、他の力も操らねばならん」


その説明に、アヤは思わず口を半開きにして固まる。


「ハッキリ言って、不可能に近い。だからこそのSランクだ」


「さっきのユニークスキル単体でも難しいのに、それに魔法を合わせるのか?」


アヤの声に、少しだけ困惑が混じる。


「おっと、勘違いするな」


カイザはすかさず訂正する。


「ユニークスキルじゃなく、スキルに魔法を合わせるんだ。お主でいうと、ノックに火の魔法を合わせることが出来ればよい」


「??ユニークスキル、ノヴァには、魔法を合わせられないのか?」


「当然の疑問だな。それも、不可能ではない。しかし――ユニークスキルに魔法を合わせた【ウルト】を扱えた人間は、歴史上ふたりしかいない」


その言葉に、アヤが身を乗り出す。


「誰?」


「大賢者アルケインと、勇者アレイヤだ」


「マジか」


アヤの目が見開かれる。自分自身の名前の元となった勇者アレイヤ。


その領域を知って、彼の心は一気に燃え上がった。


「そういうことだ。今は、それができる者はいない……」


カイザは少しだけ残念そうに目を伏せた。


「へえ~。それなら――俺がそのウルトを身に着けてやろうじゃねぇか!」


アヤの目が、挑戦的に輝く。


「フッ、その意気や良し」


カイザは思わず笑みを漏らすと、アヤをじろりと見下ろした。


「だがその前に。お主の装備を整える必要があるな。いつまでもそのボロボロな服では、かっこもつかん」


破れた服はあちこちほつれており、今にも裂けそうだった。


「ん~、でも、破れてるの、かっこいいだろ?」


アヤは胸を張りながら、破れた服を見せびらかす。


「かっこ、いい??」


カイザは一瞬、言葉を失った。

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