29 ユニークスキル
「オホン! それよりアヤ、君が魔族を退けたと聞いたが……ユニークスキルを使えるのかね?」
「ユニークスキル?」
「む? 知らんのか……。スキルについては理解しているかね?」
アヤは、自身が使う《ノック》を思い出す。
「ん~、魂の力……みたいな?」
「ふむ、それもスキルの一種だな。アヤ、君が言う魂の力のほかにも、エルフやドワーフ、獣人など、種族ごとに特有の力がある。そして、神の加護による力も含めて、この世界には魔力とは異なる、さまざまな力が存在する。」
話の途中で扉が開き、エミリが部屋に入ってきたのを一瞥して、カイザは続きを話す。
「だが、それらはあまりにも種類が多く、名称も地域や種族によってバラバラだった。そこで、アメリオ王国の初代王にして、魔術を創りだした大賢者アルケインは、それらすべてをひとまとめに『スキル』と定義したのだ」
「へぇー」
話の切れ目でエミリは、机に飲み物を置いた。
「はい、お茶です。こっちはアヤくんの分のジュース。それと……お爺ちゃん、子供に長話したら嫌われますよ?」
エミリのひとことに、カイザは苦い顔をし、ジャンは頬を引きつらし、アヤは面白がる。
「……うむ、気をつけよう」
カイザは少し咳払いし、姿勢を正す。エミリはその背後に立ったまま微笑んでいる。
「それで? ユニークスキルって?」
アヤが話を戻すと、カイザはちらりとエミリを気にしながら答えた。
「あー、ユニークスキルってのは……強力なスキルのことだ」
(え、説明それだけ?!エミリさんの言ったこと、すげぇ気にしてる!)
あまりにざっくりとした説明に、アヤは思わず笑いそうになる。
「それじゃ、さすがにわからねぇよ」
カイザは難しい顔をしながら、ゆっくりと話す。
「む。……先ほど説明した。その、色んな力を組み合わせ、普通のスキルとは一線を画すほどの、強力で特別なスキル……これでわかるか?」
アヤはその説明で、なんとなく理解した。
「……なるほど。あの魔族に放った、最後のスキル……《ノヴァ》。あれは――もしかしたら、そのユニークスキルってやつかもしれない」
それを聞いたカイザは、興味深そうに、相槌を打つ。
「ほう?」
「今は使えないんだ。……なんであの時は使えて、今は使えないのか。わからなかったけど…今の話を聞いて、なんとなく……わかった気がする」
いつも《ノック》で使っている力。さっきは魂の力と言ったが、もしかしたらそれすら、違うのかもしれない。
この世界には、アヤの知らない不可思議な力――未知の力が、まだまだたくさんある。
「今は使えない、か。魔族を退けるほどの力、やはりユニークスキルの可能性が高い。それにしても驚異的だな。ユニークスキルとは研鑽を重ねた一部の者のみが辿り着ける領域。扱いが難しくて使えない時があるのも当然ある。それをわずか七歳で手をかけるとは、歴史上初めてかもしれんぞ?」
「お爺ちゃん、あまり興奮しないでください」
エミリのひとことで、興奮し語っていたカイザの肩が落ちる。




