20 再会②
「……ぐすっ。メルちゃんよかったですねぇ……恋人と親友の、感動の再会……ですぅ……うぅ……」
エミリが感極まったように目を潤ませ、手を合わせている。
「エミリ、変な声出さないでおくれ」
呆れたように眉をひそめるオリサ。
「オリサさんは冷たいですねぇ……あの三人の絆は、涙なしには語れませんよ……!」
「私は、あんたに呆れてるんだよ。はぁ……。もう行くよ。あんたも、さっさと仕事に戻んな」
ため息をひとつ吐き、オリサは踵を返す。
「いってらっしゃーい。ちゃんと三人を見守っておきますねぇ!」
手を振りながら、エミリはしれっと答える。
「エミリさんは相変わらずだな」
アヤがため息まじりに言うと、落ち着いてきたメルが呼びかける。
「アヤ」
「ん?」
チュ
「~~!!」
メルはアヤのほっぺにキスをして、涙を拭ったあとは、輝くような綺麗な笑顔を浮かべた。
それを見ていたエミリは声にならない声を発する。
「私たちもそろそろ行くね。アヤはまだ休んでないとダメだよ。」
「う、うん」
アヤは突然のことに目を白黒させて、まともな返事ができなかった。
メルとレオが出て行った後に心臓の音が大きくなり、顔が熱くなっていく。
「青春!ですねぇ」
にやにやするエミリにアヤは、赤らめた顔のまま、睨みつけた。
病室を出たレオとメルは、静かな廊下を歩き、礼拝堂の入り口で神父に頭を下げた。
「さっきは、急いじゃって……すいません」
「すいません」
レオが恐縮したように言うと、メルがそれに続いた。年配の司教は目尻に皺を寄せて、にこやかに首を振った。
「いいえ、謝ることではありませんよ。大切なお友達が目を覚ましたのですから。それは、神に感謝すべき出来事です」
「はい。光の女神ルセリア様に感謝の祈りを捧げます」
レオは目を閉じて静かに胸元に手を当てて、短く祈りを捧げる。
メルはその様子を見て少しきょとんとしたが、すぐに困ったように笑って、レオを真似て祈った。
「……えっと、神に感謝します」
そのやりとりも、司教はすっかり見慣れていたようで、目を細めてほほえましく見守っていた。
「司教様、今日はお手伝いできること、ありますか?」
レオが祈りを終えて顔を上げ、いつものように尋ねる。ここ最近、レオとメルは治療の手伝いなど、できることを進んで引き受けていた。
四日前――
魔族の襲撃から始まり、エルナの町が炎に包まれたという報せ。
教会にアヤが運ばれた時はひどい状態だった。
命こそ繋ぎとめたものの、意識は戻らず、眠ったままのアヤを見ると、気が気じゃなかった。
それでも今は、アヤが目覚めてくれて、ようやく、心が静かに息をつきはじめた。




