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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
2章 カリオンの街
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19 再会①

「ジャンさん。…あのあと、どうなった? 町や…孤児院のみんな…は?」


ジャンの表情がわずかに陰る。


「あーー……結果から言うと、あのバラガンとかいう魔族は――逃げた」


「……倒せて…いなかった……か」


「それと、町は壊滅状態。それから、孤児院のみんなだったな……」


一拍、言葉を止めたジャンの目が、どこか遠くを見つめる。


「……残念だが」


「そう……か……」


アヤは、ふと自分の拳を見つめた。


「……おれは……選択を、間違えちまったのか?」


「ん?」


「……あの時、魔族じゃなくて……孤児院に戻っていれば……みんなを助けられたかもしれない」


喉の奥が熱い。張り裂けそうな胸の奥で、後悔が静かに広がっていく。

ジャンは黙っていたが、やがて静かに言葉を返す。


「……確かに、その可能性はある。だけどな、アヤ――お前のおかげで、あの魔族は撤退したんだ」


「え……?」


「俺は見ていなかったが、アヤが奴に、深手を負わせたんだろ?お前がいなけりゃ、俺たちはもっと多くを失ってた」


少し俯いたジャンの声が、かすかに震えていた。


「逃がしちまったのは、俺のせいだ……おれが、とどめを刺せなかった」


「ジャンさん……」


「だから、アヤ。お前は何も気にするな。お前のおかげで、生き残った町の連中は大勢いる」


その言葉に、アヤはしばらく何も言えなかった。胸の奥に、まだ残る後悔が重たく沈んでいる。

けれど――その上から、静かに何かが積もる。


「……そうだな。俺が…もっと強くなって、魔族もガーゴイルも……全部まとめて倒せるくらい…最強になる。」


アヤは、少しだけ微笑んだ。


「……ん?…そう、だな。」


ジャンはツッコまなかった。思った返答とはズレたような感覚がするが、元気を取り戻したのなら、それでいい。


ドタドタ……慌ただしい足音が、アヤの病室に近づく。


――バンッ!


勢いよく扉が開いた。


「アヤ!!」


まさか――その声を、ここで聞くとは思わなかった。


「メル。」


俺は寝たまま、顔だけをそちらに向ける。


「……アヤっ……!! うわあああん!! アヤぁっ!! アヤぁあ!!」


メルは駆け寄るなり、俺の胸にしがみついた。

震える肩。涙でぐしゃぐしゃになった顔。

どれだけ不安だったか――その全てが、痛いほど伝わってくる。


「……泣くな。メル」


俺がそう言うと、メルは逆に、嗚咽を漏らす。


「やだよ……! アヤが……目、開けないんだもん……! ぜったい、もう……ダメかと……!」


「俺がそんな簡単に死ぬかよ……」


声はかすれていたけれど、それでも、いつもの調子を取り戻そうとする自分がいた。


メルはしゃくりあげながら、何度も何度も頷いていた。


「アヤ」


その後ろから、もうひとつの声。


「レオ」


「本当に目を覚ましてよかった。四日も目を覚まさないから、心配したよ」


「……そんなに経ってたのか」


「レオ! 今日の分の回復!」


メルが涙をぬぐって叫ぶ。


「うん。そうだね」


レオは手をかざし、俺の身体に柔らかな光が差し込んだ。


――温かい。


さっきまで鉛のように重たかった体が、少しずつ動かせるようになっていく。


「……もしかして、ずっと……回復魔法、かけてくれてたのか?」


「僕だけじゃないよ。ここの教会の人たちもみんな協力してくれた。アヤは……本当にひどい状態だったんだ。生きてるのが奇跡だって、みんな言ってた」


「……そう、だったのか……」


「うん。きっとルセリア様のお導きが、アヤにあったんだよ」


「だから、加護はもらってねぇって」


「ふふ……」


レオの相変わらずな女神愛に、つい肩の力が抜けた。

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