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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
1章 プロローグ
19/92

閑話 撤退

「あ……の、小僧……ッ! ガフッ」


ボロボロのバラガンが、血を吐きながら膝をつく。


「あんな……力を、隠し持っていたとはな……ガハッ……回復せねば……」


既に目的は果たされた。だが――


「許す……わけにはいかん……!」


バラガンが、燃え上がる瞳でアヤを睨みつける。


「《インフェルノ》!」


小さな火球が、アヤへと飛ぶ。

着弾の瞬間、炎が爆ぜ、周囲に燃え広がった。


「フハハハ……焼け死ね……!」

笑いは、次第に濁っていく。


「はぁ、はぁ……もう……用はない……」


ベルトに取り付けられた魔導具に手をかけると、黒く楕円形の穴――転移門が開く。

バラガンの姿は、燃え残る瓦礫の中から、静かに消えた。



それを――観ていた者がいる。

ジャンだ。


闇の向こうに消えていくバラガンの姿を、歯噛みして見送るしかなかった。


胸を焦がすような悔しさを飲み込み、ジャンは視線を落とす。

その先に――まだ炎に焼かれているアヤの姿があった。

跳ねるように駆け出す。


「アヤ……! 死ぬな!」


アヤの生存は、もはや絶望的だった。

走るジャンの脳裏に、ガロスと合流したときのやり取りが甦る。


――「ジャン、少し援護をしろ。その後、お前は下がれ」


ガロスの命令だった。


「それは……アヤが戦ってるんですよ!」


思わず声を荒げていた。


「お前にはこの戦いを見届けて、奴の情報をギルド本部に伝えろ。アヤのことは儂に任せろ」


淡々とした口調。だがそこには、戦場を知る者の重みがあった。


「……わかりました。アヤを任せましたよ」


請け負った自分に、満足げに頷き、ガロスは戦場へ向かっていった。


(死なないでくださいよ、ギルド長)


ジャンは矢を構え、魔族に狙いを定めた。


「《レインボーアロー》!」


魔法の矢を放つ。相手の弱点を見極めるために。


「奴の弱点は雷だ!」


叫ぶ。それが、自分にできる最大の援護だった。

あとは下がって、この戦いを見届ける――はずだった。

問題は、アヤが素直に下がるような子かどうか、だ。


「この、頑固者が!!」


ギルド長の命令すら無視してアヤは立ち向かおうと構える。


「あの、バカ……!」


悪態をつきながらも、ジャンは魔族との会話に耳を澄ませる。

情報は、何よりも重要だ。


(七年前のあの魔族……バラガン、か)


会話が終わると同時に、バラガンの炎が町を焼き尽くしていく。


(くそっ……くそっ……!)


ただ見ていることしかできない。その現実が、あまりにも苦しい。


そして、ガロスが炎に焼かれた。


「ガロスさん!!」


叫びとともに、ジャンは走り出していた。

そして、アヤが魔族に向かっていくのが見える。


ジャンは、矢をつがえた。


「《ボルトストライク》!」


強力な雷の矢が、音を裂いて放たれる!


矢は直撃――アヤの貫手も命中し、ガロスの追撃も入った。


しかし、それでもバラガンは倒れなかった。

三人が力を尽くしても、致命傷には至らなかったのだ。


そして――爆発が起きた。


爆風に巻き込まれ、ジャンの意識は数秒、飛んでしまった。


……目を覚まして、すぐさま状況確認し、町の端まで飛ばされてしまったことに気づく。


「くそっ!どうなった?」


直後、凄まじい衝撃音が鳴り響く。


「なんだ?!」


音がした爆心地に向かって走ると、遠目で見たのは、倒れたアヤに炎の魔法が着弾したところだ。


「っ!」


その魔法を放ったであろう魔族バラガンは更に遠く、瀕死の状態だった。


「アヤがやったのか?!」


(好機だ!あれなら俺でも止めを刺せる!)


止めを刺すべく弓に手をかけた時、バラガンは何もない空間に闇を出現させ、その闇の中に消えた。


「何?!…くそったれ!」


あれはなんだったのか。だが、消えてしまったバラガンのことよりも、アヤとガロスの救出に動いた。

17話目として書いたのですが、話の流れ的にボツにしたやつ。とはいえ必要な話なので、閑話にしました。

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