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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
1章 プロローグ
11/92

11 レオの戦い②

敵が武器を受け取る“瞬間”。そこに生まれるわずかな隙を狙う。

レオはその未来を見て、大きく後退した。


「……!!」


ガランは二本の剣を手にすると力を増した。

さきほどレオが隙をつこうとすれば、やられる未来が見えた。


ガランが鋭く舌打ちする。


「バスク!!さっさとゴミ共を片付けろ!!」


「…わかっとるわ!!」


バスクが地上へと視線を落とす。そこでは、数人の騎士たちが果敢に戦線を保っていた。


彼らは王国騎士の中でも精鋭。冒険者で言えばAランクパーティに相当する実力だ。

だが、彼らの真価は攻めではなく――守り。

仲間と民を守るための陣形、受けの型、盾の構え。すべてが訓練され尽くされていた。


それでも、バスクは問題ないと見ていた。

バスクの役割は足止めに過ぎない。真に狙うのは、加護を得た子供。レオだ。


(あの子供が想定外に力を増して、ガランは焦っているようだが、

あやつが本気を出せば勝てる相手だ。)


「まったく、遊び好きめ……」


「さぁて、攻守交代ダァ!!」


叫びと共にガランが踏み込む。二本の剣を操る双撃が、レオに襲いかかる。


速い――剣と剣が交わる。強い――力も速さも増してしまった。


また、振り出しに戻ってしまい、このままではまたやられてしまう。


レオは未来を視る。来る。右の斬撃、続いて左が脇腹を狙う。


――退けば、避けられる。だが、それではもう勝てない。


「はああああああ!!!!」


レオは退かない。

来ると分かっている刃を無視して力押しの勝負に出た。


「な!?!」


ガランが驚愕する。

二刀流の弱点を、レオは、攻めた。

左手の剣――その攻撃は甘い。力も速度も、右手よりわずかに劣る。

だから受けられる。そして――押し返せる。


(この一撃で――終わらせる!!)


――だが、ほんのわずか。レオの力は足りなかった。


刃を止めた腕が、きしむ。無視した刃が、レオの脇腹に斬り込む。


「《ブレイブ――!」


この(スキル)では、届かない未来が、レオには見えていた。


刹那、脳裏に浮かぶのは、決して諦めないアヤの姿。


「”ノック”ソード》!!!!」


レオの剣が爆ぜるように輝く。

眩い光が風を巻き、戦場に雷鳴のような衝撃音が轟いた。


自身の(スキル)と友の(スキル)を合わせた一撃が、ガランの剣を粉砕し、その巨体ごと切り裂いていく――!


(なんだと?!)


これを見ていたもう一体の魔族、バスクが驚愕する。

あのガランがやられると思っていなかったのだ。


(だが、まだ負けておらぬ!!)


レオも無事ではない。左の脇腹に、深々と斬撃を喰らったのだから、バスクは全ての武器を向かわせる。


「くっ――!!」


「させるかぁあああ!!」


地上の騎士たちが反応する。盾を構え、剣を掲げ、必死にバスクの武器を止める。

しかし、いくつかの武器はすり抜け、レオを襲う。


「死ぬかと思ったぜェ!!はぁはぁ」


「生きておったか。」


「……グッ、こいつ……まだ……!」


崩れ落ちたと思われた魔族ガランが、血を流しながらも起き上がる。

さすがのバスクも焦ったが、時間を稼いでガランの回復を待つ。


その姿を見た一人の騎士が、目を見開いた。


「今の内だ!仕留める!!」


騎士が叫び、命を賭して突撃した。


「うおおおおおぉぉ!!」


「バスクッ!!」


「見えておるわ!!!」


バスクが即座に反応。

浮遊する無数の武器が、その騎士へと一斉に襲いかかる。


だが――止まらない。

騎士は、それすら無視して突っ込んだ。


(届けばいい、届けば……!)


その渾身の一撃が、確かにガランを捉えようとした――だが。


「ぐっ……!」


ガランはよろめき、避けようとして足を取られた。


それが幸いし、騎士の剣は空を切る。


「あ、あぶねぇ……」


その直後、騎士の全身に突き刺さる無数の武器。


「……ッ!」


騎士は、バスクの武器によって串刺しにされ、その場で絶命した。


「いやあああああ!!!」


悲鳴が響く。


剣を握ったまま崩れ落ちた騎士の姿が、戦場に静かな衝撃をもたらし、一人の少女が暴走した。

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