表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
1章 プロローグ
10/92

10 レオの戦い①

「知ってルゾ。そノ目! 黄金に輝く勇者ノ目は、未来を見通し! 敵ノ力を暴く!! ハァーハッハッハッハ!!」


「貴様ノ目には、俺ガどう映ル? 俺ノ力は……見えルノかい?」


魔族が再び、一瞬で距離を詰める――だが、今度はレオが迎え撃った。


「《ブレイブソード》!」


――ドォン!


轟音と共に土煙が舞う。


光の女神ルセリアの加護の力を剣に込めて放った。

レオの(スキル)である《ブレイブソード》だ。


レオは油断なく、土煙の中を睨みつけながら、距離を取った。


土煙を裂いて現れたのは、鋭い爪の一閃。先ほどまでいたレオの位置を、切り裂いていた。


「おぉ? 本当に見えてやがルぜ!! そノ黄金ノ目、誇張でモなんでモねぇナ!!」


魔族のその爪は、鋭く、長く、変形していた。


瞬間の突撃。さらに速さを増した連撃。


レオは必死に回避する。見えてはいる――だが、体が追いつかない。


黄金の瞳が捉えても、魔族が速さ過ぎて、対応が遅れる。


そして――


――ザシュ!


「……っ!!」


爪が横腹を掠めた。鋭い痛みに歯を食いしばる。


この程度なら、加護で癒せる……だが、今のレオには黄金の瞳を解かなければ、回復できない。


しかしこの相手は、それを許さない。


反撃を狙おうにも、うまくいく未来が見えない。


焦りだけが、レオの胸を満たしていく――。


「ハァーハッハッハッハ!!愉しいナァ!!」


どんどん対応が間に合わなくなり、傷だらけになっていくレオ。

痛みを、歯を食いしばって耐えているが、動きも鈍くなっていく。そしてーーー


「終わりダァ!!!!」

ーーザァン!


鋭い爪が、レオの胸を深々と切り裂いた。


「レオーーー!!!」


「ハァーハッハッハッハ!!!!」


「ハァーハッハッハッハ!! 最高だナァ、オイッ!!」


レオが倒れ伏し、メルの悲痛な叫び声と魔族の笑い声が、響く。


魔族は勝利を確信していた。胸を裂き、大量の血を流させた。

あれはもう、放っておけば失血死する。とどめはじっくりやればいい。

ただそれだけの話――のはずだった。


その“常識”こそが命取りだった。


魔族に油断を。


レオには――癒しの時間と、成長の機会を、与えてしまった。


「ブレイブソード!」

ーードオォン!!


魔族は大きく後退し、間一髪で避けた。


「オイオイ!まだ動けるノかよォ!!」


それでも魔族の油断は解かれない。


最後の悪あがきでしかないと、そう思い込んでしまった。


魔族は知らなかった。光の女神の加護の、本当の脅威を。


死線を越えて、立ち上がる勇敢な力。


逆境を跳ね除け、成長する力。


覚醒(リゾルヴ)




地を蹴り、突撃を仕掛けたのは――レオだった。


「…ッ?!」


魔族ガランの瞳が見開かれる。


その視線が捉えたのは、先ほどまでとは、まるで別人のような速度で迫る少年の姿。


剣閃が走る。風を裂く鋭さで、レオの刃が容赦なく襲いかかる。


その猛攻に、ガランは躱すことが出来ず、咄嗟に爪で応じた。

受け流すというより、必死にしのいでいる。


「オマエ……!!何ダこノ、速さハ!?!」


素早さこそ魔族ガランの最大の武器。それなのに、目の前のコイツは、自身の速さに肉迫している。

信じられないという叫びが、戦場に響いた。


先ほどまでは明らかに劣勢だったレオが、今や魔族と互角、いや、押し始めている。


「何をしておる!! ガラン!!」


焦った声が上空から飛ぶ。もう一体の魔族の怒号だ。


「うルさい!! 黙ってロ!!」


ガランが怒鳴り返すが、その声にも、余裕はなかった。


――だが、余裕がないのはレオも同じだった。


黄金の瞳に映る“未来”を頼りに、躱しづらく、防ぎにくい剣筋で攻め込んでいる。

だが、それでも斬り伏せるには至らない。今のレオでも、まだ、魔族ガランの方が速い。


敵が冷静でない今が、最大の好機。ここを逃せば、逆転される。


「チッ! おいバスク!! 武器をヨこせ!!」


「……! 好きに使え!!」


バスクと呼ばれたもう一体の魔族が、指を弾くと、バスクの背後で宙に浮かんでいた二本の黒い剣が、まるで意志を持つかのように滑空し、矢のような速度でガランのもとへ飛ぶ。


(剣を受け取る時に隙ができるはず――それが最後のチャンスだ。)


レオがその未来(とき)を待つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ