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トリニティ・ゼロ  作者: 人未満
1章 プロローグ
1/75

1 アヤとレオとメル

1話目をリテイク?再投稿しました。

アメリオ王国の片隅、小さな町エルナ――


その町外れに建つ孤児院は、シスター・クレイシアがひとりで切り盛りしている、小さな場所だった。


ある日の夕暮れ時。


暖かな夕陽が窓から差し込む中、集まった子どもたちに、クレイシアは優しい声で御伽噺を語っていた。


「むかしむかし、光の女神ルセリア様から加護を授かり、勇者となって魔王に立ち向かい――」


クレイシアの語りに、五歳の三人の子どもたちの瞳は輝きを増した。


「勇者と魔王、どっちもつえぇ! 俺も強くなりたい!!勇者も魔王も超えて最強になる!!」


茶髪で茶色い瞳の少年、アヤが声を弾ませて宣言する。


「わたしは、えーっと……アヤと、けっこんする!」


隣で聞いていた、長い黒髪に紫の瞳の少女、メルが突然の告白をした。


「えぇっ!? なんでそうなる!?」


驚いたアヤが目をまんまるにする。


メルは照れながら答えた。


「えっと、アヤ、かっこいいから…?」


「うーん……強いとかっこいいからな! わかった!」


アヤは純粋にその言葉を受け止める。


「やくそくだよ?」


「約束だ!」


メルは嬉しそうに微笑み、小さな手を差し伸べる。

それをアヤはぎゅっと握りしめて、少しだけ照れ隠しに笑った。


そしてもうひとり。

金髪に碧い瞳の、可愛らしい少年レオは――

二人のやり取りに全く反応せず、絵本に描かれた、美しい光の女神ルセリアの姿をじっと見つめながら、静かに呟いた。


「この人……光の女神さま? すごくきれいだなぁ……」


三人の胸に小さな約束と憧れが宿る。


アヤは強くなるために、特訓をしていた。


アヤは全力で走っていた。汗だくで、息も絶え絶え。それでも足を止めなかった。

とうとう限界がきて、アヤの足ががくんと崩れて倒れ込んだ。


「ぜっはっ……まだ……まだいける!!」


すぐ起き上がり、さらに全力疾走をする。しかし、それも数秒で倒れ、今度は意識も失う。


「アヤっ!?」「アヤ!!」


メルは純粋にアヤが倒れたから心配したが、レオは死んだのでは?と思い、走る。


「アヤ!!死んでないよね?!」「ねぇ、大丈夫なの?アヤは……」


レオの異常な心配に、不安になるメル。


だが――


「……ぐはぁ!はぁ…はぁ…もう一回っ!」


むくりと起き上がったアヤが、すぐにまた走り出してしまう。


「……はぁ、光の女神ルセリア様、アヤを守ってください。」

レオはその姿に呆れ女神に祈った。


「アヤ、すごいね!」


「メルも女神様に祈るといいよ。」


「?うん!」


メルは純粋にアヤを称賛し、よくわからないが、神にお祈りをする。


――それからというもの、アヤの“自主特訓”は日に日に過激になっていった。


ある日は、火の上に差し出した自分の手をじっと見つめて


「……ぐっ、くそ、耐えろ……俺は最強になるんだ……!」


「大丈夫なの?あついよ??」


「ルセリア様……」


そんな無茶な訓練の日々を過ごす。レオが安心できたのは瞑想の時だけだった。


六歳になった頃、その日はある特訓をしていた。


ドン、と鈍い音が鳴る。木がぐらりと揺れ、そして――倒れた。


「できた……!どうだ俺の(スキル)!」アヤが叫ぶ。


「わあ……!すごーい!」


純粋に感動して拍手するメル。


「……すごいね。ほんとに」


目を丸くして驚くレオは、少しの感動と、尊敬をアヤに抱く。


そして――時は流れ、三人が七歳になる年。


孤児院の玄関前で、クレイシアがいつもより神妙な表情で言った。


「今日は、加護の儀の日ですね。三人とも、準備はいいですか?」


三人とも思い思いに頷く。

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