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フィアドラ神殿の大神官

読んでいただいてありがとうございます。久しぶりに再開したいと思います。ゆっくり更新ですが、よろしくお願いします。

「ようこそ、フィアドラ神様の神殿へ。ラピテル神殿の神子殿」


 祈りを捧げていると、人の良さそうなお爺さんがシルフィーリに話しかけてきた。

 神官の服を纏ったその人物を見て、シリウスが少しだけ嫌そうな顔をした。


「シルフィー、この方はフィアドラ神殿の大神官でキオル殿だ」

「まぁ、大神官様ですか?初めましてシルフィーリと申します。恐れ多くもラピテル神様より神子の称号をいただいている者でございます」


 丁寧に礼をするシルフィーリを、キオルは優しい目で見ていた。


「遠い地からよくおいでくださいました、神子様。あなたのことは風の噂で聞いておりました。ラピテル神殿に隠された神子様がいらっしゃると。何度か、神子様のことでラピテル神殿に問い合わせをしたのですが、相手にもされず、ずっと案じておりました」

「私のことをご存じだったんですね」

「本当に噂程度でしたが。神子様をラピテル神殿で隠すのはいかがなものかと思い各国の神殿と協力して抗議をしていたのですが、そうこうしているうちに戦争になってしまい、私共も慌てておりました。出来ればこちらの神殿にいらしてくださるのが一番いいのですが」


 キオルがシルフィーリを神殿に招きたい理由は純粋に保護なので、そこまで他意はない。

 公表こそしていないが、神子はラピテル神だけのものではないのだ。

 神子は、この世界全体の神子。

 ラピテル神が最初に選んだというだけで、神子に関しては全ての神殿が保護する対象となる。

 そもそも神子の資質を持つ者は少ないのだ。

 その中でさらに神が気に入る存在なもっと稀少だ。


「私はシリウス様の婚約者になりました。婚約者は一緒に暮らすものなのですよね?シリウス様」

「えぇ、そうですよ、シルフィー。特に私たちの場合は、一緒に住まないとすれ違いが多くなってしまいますから。想い合っている者同士のすれ違いは悲劇しか生みません」


 もっともらしいことを言っているが、婚約者が一緒に住まなくてはいけないなどということを初めて聞いた大神官は、口元をひくひくさせた。

 いや、この青年が優秀なくせしてどこかぶっ飛んでいるのは聞いていたが、どうして神子に執着しているのだろう。


「しかし、今まではずっと神殿で暮らしておられたのですよね?シリウス殿は貴族です。神殿での暮らしとは違いがたくさんあるでしょう。こちらでしたら、今まで通り、とはいかないかもしれませんが、それに近い暮らしが出来ますよ」


 キオルは、故国を離れたった一人で敵対していた国に連れて来られた神子を保護しなくては、と意気込んでいたのだが、実際に会ってみると、なぜか出来たばかりの婚約者が神子を溺愛していた。

 しかも、ものすごく激甘な雰囲気を出している。

 後ろに控えている神官が砂糖を吐きそうな顔になっているのも仕方がない。

 何なら、自分も吐けそうだ。


「申し訳ありませんが、私はシリウス様と一緒にいたいです」


 ペコリと頭を下げる神子は可愛い。

 ではなくて、出来たばかりの婚約者を何故そこまで信用出来るのだろうか。


「神子様、どうしてそんなにシリウス殿の傍にいたがるのでしょうか?」

「……上手く言えないのですが……シリウス様の傍にいることが、今の私にとって一番良いことなのだと思います」


 どうやら神様も認めてくださっているようだし、シルフィーリにとってシリウスの傍にいることが正しいことなのだ。

 もう理屈ではない。


「安心してください、キオル殿。シルフィーの安全は保証しますよ」

「……分かりました。神子様、神殿はいつでも神子様の味方です。シリウス殿とケンカしたり、彼のことが嫌になったらいつでも来てください」

「はい。その時はよろしくお願いします」

「ひどいですね。もちろん、そうならないように努力しますよ」


 シリウスはそう言うと、シルフィーリの頭を撫でたのだった。


 

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