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シリウスの立場

読んでいただいてありがとうございます。基本、シリウスの口調は丁寧な感じにしているのですが、たまにうっかり皇帝陛下がまじってくるッス。気が付いたら直しているのですが、しばらくそのままのところもありました、すみません。

 シルフィーリは、よく考えたらシリウスの立場を何も知らない。

 神殿で育てられた箱入りだが、貴族については神官たちから詳しく教えられた。

 何故なら、神殿にとって彼らは色々な意味で資金源だったので、神子が彼らと諍いを起こすのは止めたかったからだ。

 神子と呼ばれる存在について本当ならどこよりも敬わなければいけないはずのラージェン王国の神官たちは、己の保身や懐に入る金にしか興味のない腐った人物が多く、まだまだ子供のシルフィーリを見下す者も多かった。

 そういった者たちにとっては神子よりも王侯貴族の方が大切だったので、シルフィーリにはしっかりと貴族についてだけは教え込んでいた。


「どうしました?シルフィー?」


 アイスブルーの瞳に優しい光を湛えていてこちらを見ている男性は、シルフィーリが選んだ。

 フィアドラ帝国の若き皇帝の隣にいた人物。

 今はそうでもないが、初めて会った時は濃い疲労感で今にも倒れそうな顔色をしていて、その色がラピテル神の象徴である青白い炎と同じだったから、自然と彼に目がいった。

 けれど、よく考えたら上位者のいる位置にいたシリウスは、とっても偉い人なのではないのだろうか。

 屋敷も大きくて広いし、皇帝の信頼も厚いようだし……。

 皇帝の姉夫婦であるジュノー公爵家の娘になることで、シリウスの婚約者に相応しくなったと言われたくらいだし。

 今更ながら、シルフィーリはシリウスのことを何も知らないことに気が付いた。


「あの、シリウス様って、どんな立場にいるのでしょうか?」


 純粋培養で育てられたシルフィーリは、信頼する相手であるシリウスに素直に質問した。


「立場、ですか」

「はい。私、シリウス様のことを何も知りません。どのような爵位にいるのかとか、帝国での立場とか」

「あぁ、なるほど。そうですね、貴族としての私は、シュレンベーグ大公という地位にいます。主な仕事は、皇帝陛下の補佐です。現在の我が帝国は使える皇族の数が少ないので、陛下に扱き使われて日々精神が疲弊していますね」

「……大公?シリウス様、大公って、えっと、陛下のお身内なのですか?」

「従兄弟です。私の父が先帝陛下の弟でしたので。父は私がシルフィーよりもう少し年齢が上の頃に、病で亡くなりました。そのため、私が早々に大公の地位を継ぎました。非常に残念なことに、皇位継承権も持っています。それも第二位です」


 第二位ではあるが、第一位の継承権を持っている皇帝の弟が少々身体の弱い人物なので、実質一位だ。

 第三位はウェンディで、ウェンディの子供にも継承権は与えられている。


「陛下には早く妻を娶っていただきたいのですが、陛下のお心に添える方がなかなか見つからないのが現状です」


 ヒューゴに妾はいるが、正妃はいない。姉のところに男子が二人いるので、最終的にはどちらかを養子にして継がせようと思っているらしく、急いではいない。が、当然、周りは色々とうるさく言っている。

 シリウスにしても、先代の時の血みどろ皇位継承権争いの話を聞いて育っているし、ヒューゴの時のごちゃごちゃを体験しているので、最善はヒューゴの子供が統治の能力を持っていることだが、そうでない場合はウェンディの息子二人の素質を確認してからでもいいのではないかと思っている。

 

「あの、そんな方の婚約者が私では、ご不満が出るのでは?」

「まぁ、普通なら出るでしょうね。神子といっても敵対国の神子ですし」

「ですよね。ですが、私は……」


 言いかけたシルフィーリは、はっと口を閉じた。

 いけない、いけない。これ以上は、大神官様との約束を破るところだった。

 それによく考えたら、歴代の神子も似たような高位貴族、もしくは王族が婚約者だった。

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 不自然な止まり方をしたシルフィーリに、シリウスが怪訝な顔をした。


「シルフィー?」

「えっと、何でもありません。それより、不満の件ですが」

「問題ありませんよ。あれだけ大勢の人の前で陛下が宣言してくださったのです。今更、陛下の決めたことに文句を言おうものなら、陛下が嬉々として反逆罪で家を潰します。えぇ、それはもうヤル気満々です」


 シルフィーリには悪いが、彼女は一種の囮だ。

 ヒューゴやシリウスに不満を持つ者に与えられた口実だ。


「シルフィー、面倒なことは全て私や陛下に任せておけばいいんですよ。シルフィーは、やりたいようにやってください」

「はい」

 

 大公という地位にいてもシリウスはシリウスだ。

 今、シルフィーリと一緒にいるシリウスを信じるだけだ。

 そう思ってシルフィーリはにこりと微笑んだのだった。

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