『すまん』
セイテツは、とりあえず、ようやく目覚めた相方の頭を軽く叩いた。
「・・・てえな。セリにも叩かれたぜ」
「当然だ。 ―― なあ、スザク。これだけ聞いてくれ。 シュンカは、おまえを助けたいから、親父殿との約束を、破ったんだ」
「・・・だから、こんなに『気』が少ねえのか」
「いいか?目覚めたシュンカに、もし、 ―― ひどいことを言ったら、おれは、その場でおまえをぶっとばす」
「ひどい?・・・ああ、泣かすようなことか?」
「泣かないまでも、傷つけるようなことだ。―― おまえ、ここまでされて、そんなこと平気で口にすんなら、―― あ。 シュンカ?」
そのとき、ベッドに眠る子どもが、うっすらと目を開けた。
ぼんやりとした表情だが、二人を認めたらしく、口もとが動く。
安堵のあまり視界がにじんだ絵師が、坊主の背中をどついて近寄らせようとしたが、手が空を押す。
自分の意思で、身をかがめた坊主が、子どもの額をなであげた。
「・・・すまん・・・」
その、様々な感情をふくませた一言に、安心した絵師は、そっとあとずさる。




