すでにこの世にいない
眺めたホムラの口から、長く黒い舌がのぞき、くちびるをなめた。
「―― では、おまえ、ミカドのもとへつれ行くぞ」
蛙の言葉に、アラシがぶありと羽をあげた。
だが、ホムラはその場を動かない。
「 またれい。 ―― よいか?わたしが先ほど認めたのは、『西の将軍付ホムラ』のことだ。 ―― わたしはな、『西の将軍付のホムラ』ではない」
「どういうことだ?」
蛙の問に、ホムラは声をあげて笑った。
「 ―― 残念なことに、『西の将軍』ケイテキ様は、既に、《この世》にいらっしゃらない。つまり、『西の将軍付』も、今この世にいないのだ。 ―― ここにおるわたしは、ミカドの《 くちだし 》からはずれた、ただの元神官、ホムラだ。 ミカドがさがしている『ホムラ』では、ない」
『枷』は、あの男を『土釜』へ突き落としたときに、とれているのだ。
勝ち誇ったように、シモベ共々お帰り願おうという男へ、蛙がその感情のない目をむけた。
「――何を言っておるのかわからぬが、ケイテキは、この世におるぞ」
「!?っな、なにを!」
「疑うなら、この水盆を使うが良い」
シュンカがそれを、地面に置く。




