時間かせぎ
着物の色が、血を吸って黒い。
「―― すまねえ・・なにか、仕込まれたみてえだ」
―― まさか、シュンカに負わされた傷に?
「貸してやんぜ、テツ。・・・どうも、持っていられねえや・・・」
「スザク!?」
もたれた坊主の身体がずずと下がった。
左手の先からは血が滴り落ちている。
くくく、とホムラがわらった。
「わたしに『傷』をつければ、《術》が動くように仕込んでおいたのだ。 ―― 血だけが一気に抜けてゆく。残った身体と気は、喰ってやるさ」
「・・・ちくしょう、こうなりゃ時間との戦いだ」
迷うこともなく絵師は坊主の刀を引き抜いた。
扱えないことなない。
だが、なにしろ長いし、重いのだ。
いきなりホムラは火を放つ。
よけるあいだに、間を詰められる。
あわてて飛びすさるが、分が悪いのは明らかなうえ、ホムラの『足』が徐々に、再生をはじめている。
踏み込み、攻め続けるが、一瞬の間をみわけて炎が襲う。
「くっそ・・・おれもシュンカと朝稽古しときゃよかった」
気をまぎらわせようと苦しい中で口にしたとき、気配が現れ、風が巻き起こった。
「・・・やっとか・・」
あたりの木々をゆらし、それが舞い降りた。




