武器はない
そのままスザクの刀が口を押し割ろうと思ったとき ――
きゃあああああああ!!
ころされる殺される!!ほうろくさま!ほうろくさまあああああ!!
「っつ!!」
いきなり女の悲鳴が身体の下からおこり、めずらしく怯んだ坊主が後ろへ飛んだ。
絵師が、ホムラの着物をやぶって胸から『生えた』黒鹿に目をみはる。
むこうの枝に飛び移った坊主は顔をしかめ、左の肩口を抑えていた。
「 っくしょう、取り込むだけでなく、こういうことにつかうかよ!」
セイテツが札を出すが、それより早くホムラがむかって来る。
どうにか火をよけたセイテツは、木から落ち身体を打った。
そこを狙って投げつけられた炎を、ヨクサが消す。
「さすが守り神!」
軽口などたたいてみるが、明らかにまずい状況。
体勢を立て直し、近頃身体を鍛えなおしておいて良かったと実感しながら、こっちに来いと思いながら木々の間を駆け抜ける。
どさり、と重い音がして、ホムラが木から降りる気配がむこうでした。
ざざ、と茂みをかきわけ、手だけとは思えない動きで先に回りこまれる。
「おまえ、武器はないのか!?」
「神官だからねえ。『力』が武器なんだよねえ」
テングににらまれた男が両手を上げれば、ずざん、と足元に、坊主のでかい刀が投げつけられ、突き刺さる。
「っぶねえ!おい!スザク!おま ――」
むこうの木の上にまだいる坊主をみやれば、力なく幹に寄りかかり、だらりと左腕を下げた姿がめにうつる。




