怒りに気付かず
残虐描写あり。ご注意を
こちらに手をださずとも、追いかけられるように同じ速さで進むテングどもに、誘導されたようにすすむしかない。
それでも、一瞬で選んだ枝をめざし掴んででわたり、ねらわれやすい直線移動はさける。
が、ひらけたそこで、奥の木々の間から、刀を構えた坊主が飛び迫ってきた。
がつん、と振り下ろされた刃をとめたのは、耳元までさけた口にならぶ、さきほどあらたに生えたばかりの、ふぞろいな歯だった。
「もし、天宮に着けたとしても、てめえが、あの化け猫に喰われて終わりだぜ」
「 ――――っぐ!! 」
坊主が諭すような声音で下ろす刀は、そのままホムラの口の中へ押されてゆく。
ぶちっと音をたて、耳近くの口の両端に、刃がくいこんだ。
感情を表さない眼をした坊主の『気』が、濃く乱れ、ゆれている。
これが、《怒り》だということを、当の男は気付いていない。
「 ―― それにな、シュンカを喰うつもりなら、まず、おれとテツを喰ってからだろ?」
にい、と笑うその様子は、とても坊主とは思えなかったが、これがスザクだ、と離れた枝からセイテツは苦笑した。
自分の怒りに気付けないほど鈍く、静かな『動』で威圧する。




