57/71
すべてつかむ
人のものではないように、ぶかっこうにあちこち膨れた手が輝き光ると、次々に炎を操る。
前と比べ物にならぬほど、はるかに火の量が多い。
にげろ、にげろ
ホムラは笑いながら、男二人とテングを狙う。
逸れたように見せかけ、まだ燃え残っている森を狙い、火を落とす。
もえろ、もえつきろ
――― すべて なくなれ
この世に《黒森》が欠かせぬ場所だなどと、どうでもよいことだ。
『力』を均等にするための『場』など、必要ない。
わたしが、――― すべての『力』をつかむのだ。
そうして、はるかむこう。
天にむかってのびる、あの階段の白いかげを、ゆっくりと目指すのだ。
ひと跳びで、木々を二、三本軽くこえた。
動きも、並みではなくなった。
あの、伍の宮の坊主と絵師も、 ―― 所詮は人間。




