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『土釜(つちがま)』を喰う
コオオオオオオオオオ
だらりと両手を下げた男の口から、風のような音が通り、『土釜』の動きが止まった。
「っ、しまった!!」
線を引き終えぬヨクサが《トッコ》をもちかえ、他のテングに合図をした。
一斉に急降下するテングたちは、空にあった線をつかみ、前進をやめたそれに、直にまきつけるつもりだったが、黒い男が速かった。
ごきゅるるるるるごぼぼががぼぼぼ
一気に吸い込まれる激しい音をたて、『土釜』であるかたまりは、数秒で男の口へ飛び込んだ。
絵師が自分の口元をおさえる。
「・・げえ・・。あれも、喰うのか・・・」
「感心してる場合じゃねえぞ。見ろ」
坊主が指した、飲み込んだ男の様子は、明らかにおかしい。
飲み込んだものの混乱が、体の表面を押し上げているようだ。
立っていられずに膝をつき、波打つ肌が痛むのか、声をもらして顔を覆った。
「あいつ、このまま自滅なんてこと ――」
「ねえだろうなあ」
次、気色悪い変形描写あり。




