まき散らす
どん、と土煙があがったあたりの景色にヒビがはいり、黒い影が飛び森の中に逃げこむ。
「潔く出て来い!」
「それはそちらも同じ!」
声とともに木の間から木札が投げられ、絵師の位置ではない場所を狙った。
ぼん、とあがった炎を真っ二つに割り、おおきな影が姿をさらす。
「――たしかに、おれも性にあわねえ」
坊主がたたっ切った札を踏んでわらう。
「ふん。子どもは隠すことに? だが、 ―― どこに隠そうとも、この『土釜』が《泣いて》この場に呼ぶだけよ!」
ををををおおおおお ――――
空に震えがはしったとたん、上空のテングの影が、四方に散った。
ヨクサが金色のトッコをつかみ振り上げると、光る線が空に引かれはじめた。
「つちがま!!火を吐き、この黒森すべてを吸いつくせ!!」
伸び上がった黒いかたまりは、ぶしゅぶしゅと汚らしい音でおのれの『中』をあたりにまき散らす。
びしゃり、と汚らしくセイテツの肩にもかかったそれは、一瞬で着物に火をつけた。
「あっちい!!それならこっちは」
「まて!テツ!」
「まてるか!みろ!森の残りがすべて焼ける!」
光らせた絵師の手に、坊主が本気で刀を振り下ろし、悲鳴をあげたセイテツが溜めた『力』でどうにかよける。
「っす、ざく!!てめえ!」
「落ち着け。『力』をあれに当てれば、ぜんぶもっていかれんぞ」
「 ―― あ」
そうだ。ここまで土釜が大きくなったのは ―――。




