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おとぎばなし ― 鬼哭(きこく) ―  作者: ぽすしち
鳴(なく)の章

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50/71

今更ですが



  ずるり ずぶる ずぶぶり




 シウンゴウと同じ高さほどのやわく汚い色の固まりは、燃え残った森の中を、ぐずぐずとした音で移動し、そのやわいかたまりは、常にうねりつづけている。



 『土釜つちがま』の中はいまだ、ホムラがまいた火の種と、育てるために与えた『餌』と、かき集めた『気』が、絶えず渦巻き、流れ、泡を吐き、カタチを変え続けているのだ。




 粘度の高い音で移動する後には、真っ黒で、べたりとしたものを落としてゆく。



 ぼこん、と土釜の表面に、黒鹿の顔があらわれ、ぬたりと沈む。


 一度溶けたはずのものが、完成した土釜の表面には、元のかたちで現れる。

 



 土釜から少し距離を置き歩くホムラはそれを見て微笑んだ。



「―― はてさて、ケイテキ様はいつ、おもてに現れましょうか?・・・あなた様は覚えてはおらぬでしょうが、わたしの親は、あなたに殺されたのですよ。ケイテキ様。 ・・・今更かような昔話、聞かされてもきっと心あたりなどございませんでしょう? あなた様にとっては、つまらぬ日々のこと。・・・・ただ、あったことを申しませば、 ―― あなたはみごとに恩をあだでかえすように裏切り、五つだったわたしの眼の前で、笑いながらわたしの親を切り殺した。 ・・・いや、だからといって、あなたを親の仇だなどと思ったことはございませぬが、ただ、残念なことに、 ――― わたしは、あなたが大嫌いだった」



 土釜の表に、ぼこ、と人の手先が現れる。

 

 紐でつながった、黒く太い腕と、白い自分の手を眺め、ホムラは新たにそなわった右腕をなでる。





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