今更ですが
ずるり ずぶる ずぶぶり
シウンゴウと同じ高さほどのやわく汚い色の固まりは、燃え残った森の中を、ぐずぐずとした音で移動し、そのやわいかたまりは、常にうねりつづけている。
『土釜』の中はいまだ、ホムラがまいた火の種と、育てるために与えた『餌』と、かき集めた『気』が、絶えず渦巻き、流れ、泡を吐き、カタチを変え続けているのだ。
粘度の高い音で移動する後には、真っ黒で、べたりとしたものを落としてゆく。
ぼこん、と土釜の表面に、黒鹿の顔があらわれ、ぬたりと沈む。
一度溶けたはずのものが、完成した土釜の表面には、元のかたちで現れる。
土釜から少し距離を置き歩くホムラはそれを見て微笑んだ。
「―― はてさて、ケイテキ様はいつ、表に現れましょうか?・・・あなた様は覚えてはおらぬでしょうが、わたしの親は、あなたに殺されたのですよ。ケイテキ様。 ・・・今更かような昔話、聞かされてもきっと心あたりなどございませんでしょう? あなた様にとっては、つまらぬ日々のこと。・・・・ただ、あったことを申しませば、 ―― あなたはみごとに恩をあだでかえすように裏切り、五つだったわたしの眼の前で、笑いながらわたしの親を切り殺した。 ・・・いや、だからといって、あなたを親の仇だなどと思ったことはございませぬが、ただ、残念なことに、 ――― わたしは、あなたが大嫌いだった」
土釜の表に、ぼこ、と人の手先が現れる。
紐でつながった、黒く太い腕と、白い自分の手を眺め、ホムラは新たにそなわった右腕をなでる。




