泣く何か
こちらをにらむ女に無言で肯定をかえせば、明け始めた空をみあげ、はねをばさりと打った。
「 ―― 少し前に、やはり同じ術をしかけた神官がいたが、それとは蓄えた『気』の大きさが比べられん。 それよりも、われらの領域である空を、我が物顔でふるわせるのが気に入らぬのだ。だいたい、あの・・・ ――― スザク、そこな神官くずれ。そして、こども ―――」
声をひそめたヨクサが、身をかがめてから地を蹴って飛び立つ。
くるぞ! と叫んだ声を残し、テングたちが向かう先をみれば、、薄明るい空の下に、
――― 何かがいた。
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ごうおうをおおをををおん
大鐘を、打ちならすような響きの『泣き』声。
黒森のシウンゴウに生きたまま亀裂がはいる。
森を、壊しつくすには、もってこいだとホムラは倒れてきた生木を避ける。
ごをををううううおうううんんん
それが泣けば、あたりの『気』が一瞬にして、そいつに奪い取られる。
奪った『気』を取り込みさらに肥え太り、『土釜』は進んでゆく。




