テングたち現る
まっさきに降り立った影が、ずいと寄り、結界を叩き壊した金色の《トッコ》を一振りして手から消し去った。
「ひさしいな、スザク」
真っ赤な紅をひいた、きつい顔の女だ。
絵師と子どもが振り返って見た男は、しかめた顔で、きやがったか、と首をかく。
「えっと・・スザク、こちらの方々って、もしかして・・」
セイテツが念のため聞くことにする。
「もしかしなくても、『テング』だ。人間のカタチで首と背に、はねがあんだろが」
驚く子どもは女の背でばさりと揺れるそれを見た。
うしろに黙ってひかえる男たちの背にも、同じ、艶やかな黒いはねがある。
はねはあっても、人間の女と同じ、いや、それ以上に凹凸のある身体を、きわどいつくりの服に押し込んでいるのがわかる。
目が合って、シュンカはうろたえた。
「あ、あの、『テング』って、高山のさらに奥の、」
「剣山だ。――おまえが、伍の宮に来た子どもか?・・なるほどな、これではしかたあるまいて」
シュンカを上から見下ろす女は、長い爪を子どもへのばし、触れる寸前に割って身をすべりこませた坊主としばし見合った。
「・・・久しぶりに会うたのに、ずいぶんとつれないな、スザク」
「こいつはおれの従者だ。勝手なことすんじゃねえ。ヨクサ」
「ほお。触れることも許さぬか?」
「何しに来た?じじいか?」
「ジュフクのことか?それもある。が、 われらもミカドに出立の許しを得ようとおもうていたところだ。 ―― 土釜を施した、人間がおるだろう?」




