こまる
「おい、―― 勘違いすんなよ」
ぐい、とうつむいた顔を、頭をつかんであげさせる。
「たしかに、 ―― おまえが『いる』ことで、いろんな災いが起こってんのかもしれねえ。親御殿や里人を助けられなかったのは、そりゃ事実だ。 なにしろお前は、まだ弱い。腕っ節でも心の仕組みも、まだまだガキだ」
「・・・は・・い・・・」
「でもな、ここまでで、いちばんひどい目にあってんのは、シュンカ、おまえだろ?おまえは、責めを負ってこの先も生きなきゃならねえ、いちばんひどい役回りだ。―― ・・・だから、それをよ、伍の宮で、負えばいいじゃねえか」
なあテツ?と振られた絵師は、あわてて頷く。
「・・・おまえは伍の宮の身内だ。だから、 ――― いなくなるのは、困る。 ―― だいいち、刺したおまえが手当てもしねえでおれを見捨てようなんざ、おかしな話だろ?」
坊主が、つかんでいた小さな頭を、ひきよせた。
「 ――す、ざ・・」
「おまえは、おれの従者だ。 今度、おれに断りもなくおかしなことしやがったら、・・・」
・・・『しやがったら』のあとに、坊主の言葉は続かなかった。
口元を押さえるセイテツと目が合い、首をかしげた男は、そのまま胸にあった小さな頭をひとつ叩き、ほれ早く手当てをしろ、と口調をもどしてしまった。
あ~あ。あと、ひといきだってのに。
見上げた空にはまだ星が輝く。
だが、空の色は薄くなった。
じきに、夜があける。




