術にのまれる
とたんに、シュンカがうめきひどく暴れだし、坊主が抱えこんで、舌をかまぬようにセイテツが口に布を押し込んだ。
半分以上をむこうの術にもっていかれていると、坊主が舌打ちするも、へたに術を破って同調するシュンカに返しがくるのも困る。
しかたなく、これ以上をもってゆかれぬよう、坊主は子どもの耳に経を吹き込み続け、後ろから抱いたまま覆いかぶさり、自由を奪った。
スザクとシュンカが動けぬゆえ、セイテツが大掛かりな結界を張ったとき、今度は子どもが動かなくなった。
様子をみようとうかがった子の横顔に、涙が流れるのを坊主はみつけ、なぜか自分に腹が立つ。
絵師と違い、こういうときにどう扱えばいいのかがわからない。
坊主が着物の袖で子どもの顔を雑に拭うのを絵師が見たとき、ぶありと、シュンカの『気』が、何かによって濁り、膨れ上がった。
閉じたきりだった子どもの大きな目が、 ぱちりとひらいた。
「 さ ま 」
聞き取れないほどの何かをこぼした子どもの手に、一瞬で刃物があらわれ、そのままひいた刃物の先は、シュンカのからだをかかえこんだスザクの肩へと突き刺さり、こどもは、ようやく自分を取り戻せた。




