合わせて
数日前、こちらにシュンカを押し付けてから、必要なこと以外は口にせず、輪をかけてむっつりとしている。
「それに、だいたい、おまえが原因なんじゃないのか?」
「ああ?おれが?」
ようやくめんどくさそうに身を起こした坊主は、セイテツにすがるようにして眠る子をみやり、首をかしげて腕を組む。
「シュンカの蓋は、いじっちゃいねえぜ」
「わかってる。おれが言ってるのは違う意味だよ」
ちがう?と首をかく坊主は、あいかわらずの鈍さでいやになる。
この黒森についてからのシュンカの『気』が、毎時間ごとに薄れてきているのだ。
はじめはスザクが蓋をきつくしたのかと思ったが、よくよく見れば、子どもはひどく疲れた顔をみせ、笑うことも減った。
無理して笑ってるよりゃ、いいだろうとスザクが言ったのも一理あるが、その『気』が薄くなってる原因はこの男ではないかとおもう。
「シュンカはアシのことで、自分をひどく責めてるようだ。おれたちにも迷惑をかけたと思ってるようだし、そのうえおまえがいつも以上にむっつり黙り込んでるんだから、シュンカの『気』がそれにつられるんじゃないかって言いたいんだよ」
「おれとシュンカの『気』には、つながりねえだろ」
「・・・いや、だから・・」
つながりはなくとも、『合って』いるからおまえは『蓋』ができるのだと説明をしようとしてやめた。
そうか、と、坊主が振り仰いだ。
「―― ないて、ふるえをあわせてやがんだ」
「はあ?なんのはなしだ?」
「さっき、おれがひろった『ないてる』声よ。 をんをん、うるせえのが、シュンカと震えをあわせて『気』をもっていってるんじゃねえかと思う」
「なんだと?おい、そういうことは早く言えよ」
言ったってどうにもならねえだろう、と坊主は眠っている子どもを見つめる。
「――これだけの『気』を持つ人間を、クソ猫以外が放っておくと思うかよ?出会ったきっかけの西の軍も、今度の黒鹿でさえ、目的は一緒だぜ。 要は、シュンカの持つ『気』だ。アシだって、そりゃ確かにそそのかされたようなもんだが、欲したのはシュンカの『気』だろ?」
「いや、アシの場合はそうじゃなくて・・・」
「あん?じゃあ、シュンカの『血肉』か?」
「バカ。 そうじゃなくて、アシが欲しかったのは、・・・『シュンカ』だよ」
「・・・・・・・・・あ?」
「おまえに説明しようとは思わないから、これ以上聞くな。おれは寝る」
とにかく、明日こそ黒鹿を一頭でも見つけ、早々にここを出ると決め、寝入ることにしたセイテツの背に坊主が「わかんねえ」とつぶやき頭をかいた。