あのときと同じ
※ ※
にげろ にげろ
―――― 逃げ切れるとおもうなら、さあ、逃げてみろ
あのとき、里を訪れ、火を放った黒い男が言ったのだ。
身体に刺さった矢を引き抜き、シュンカを抱え、棍をかまえたリョウゲツに、おもしろそうな声で。
にげろにげろ と。
気付けば、立ち止まり、シュンカは、またしても剣を持っている。
剣先をたどれば、いつのまにか現れ出でた、あの、黒い男。
「 どうした?ここまでか? 」
あのときと同じ、黒い笠、黒い着物。
闇にまぎれているのに、声だけが、明るいのだ。
「 そんなものを持ってどうした?わたしが、父親の仇だとでもいうのか?死んだのは、―――おまえのせいだろう? 」
「うるさいっ!!」
「 いや、違うのか。そうか、おまえ、悔いているのか。おまえのせいで、人がたくさん死んだのを 」
「 だまれ!!」
「 そうよなあ。父親母親、他の里人。そのあと天宮に移れば罪のない子犬、それにかかわった若者たちも行方知れず。果てには役神までもがおまえのせいで、姿を消した。 ―― ずいぶんと、ひどいことよなあ 」
「そ・・それは・・・」




