アシでもコハクでもない
「 助けたかったのだろう? 」
ふいに、聞き覚えのある声がかけられ、顔を隠した手を、そっとどかした。
「っす、スザク、 さま?」
自分は坊主に抱えられ、その坊主が自分を見下ろしている。
「親父どのを、おまえが助けたかったのはよく知っている。―― あの状況だ。助けたくともできなかったのは、しかたがないだろ?」
ゆっくりと、顔が近付いた。
「おれには、おまえの気持ちが、よくわかる」
「っつ!?」
鼻先がつくほどの近さで、スザクがささやき顎先をなでる。
――― だからな
と、笑んだ顔が傾いた。
「 ――おれに、喰われろよ 」
「っ!!」
坊主を思い切り、突き飛ばす。
転がった坊主の顔がばくりと裂けて中から黒い舌がのびる寸前、シュンカの懐から飛び出た光のかたまりに潰された。
まぶしさからそむけた目の端が、光に浮かぶ人の形を捉えた。
「・・・だ、だれ?」
「シュンカ、もって行かれている場合か?」
「あ、アシ!?・・いや、コハク?」
腕を組みこちらを見る若い男は、その、どちらにも似ていて、どちらでもない。
「その両方だ。おまえが肌身離さず持つ石二つと、スザク様がもどしてくださったこの魂で、ここにこうしていることができる。 ―― シュンカ、早く、ここから出るんだ」
命じるその姿が、ざらりと、ところどころ溶けるようにくずれる。




