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おとぎばなし ― 鬼哭(きこく) ―  作者: ぽすしち
吟(なく)の章

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28/71

土釜(つちがま)を喰らう



「――どうぞ。これが、最後の段階となりまする」


 脇にのいたホムラを押しのけるように、その『穴』の口を見ようとしたが、目にみえぬ硬い何かに手があたり、それ以上覗き込めない。


「ホムラ、この結界をはずせ」

「・・・できませぬ。はずせば、釜の中の火の粉も飛びますゆえ」


「かまわぬ。はずせ。 ―― おれはな、これを、『喰らわな』ければならぬ男だぞ」

 

 不敵な笑いを浮かべ、橙色の熱に照らされたケイテキは、ぎらつく眼をホムラにむけた。


「どのようにして、これを喰う?」

「・・・ケイテキ様」


「なんだ?」

「これを喰えば、――人では、なくなりますぞ?」


「ほお・・・そうか、おもしろい。まさしく、おれが望んだものだ。おまえが言うほどのその『力』、早くおれによこせ」


 せかすように、着物のあわせから腕をぬいた男はもろ肌をぬぐ。



「・・・さすれば、まず結界をはずしますゆえ、っ」


 いきなり、ホムラの片腕をとりあげたケイテキが、着物の下帯で、自分の腕ときつく縛り始める。


「これで、おれだけこの『釜』に落とすなんざ出来ないだろ?」


「・・・あいかわらず、疑り深いお方だ」


「おまえが相手じゃ、なおさらだ。 ―― おれはなホムラ、自分以外の者を、いままで信用したことなどない」


「どうぞ、お好きに」


 うっ血しそうなほどの強さで縛られた右腕は、それを確認する男の左腕とつながる。


 ホムラは続きを話す。


「 ―― 『結界』がとれれば、釜の中の『モノ』が、のぞきこむケイテキ様めがけて伸び上がってまいります。それにおびえることなく、口を開けことができれば、それがすんなりと、体に入り込みます」


「なんだ?おのれから、喰われにくるのか?」


「ええ。そのかわり、一瞬でもひるめば、逆に喰われましょう」


 はん、と西の将軍はわらう。

「そんなモンに、いちいちおびえていられるか。さあホムラ、釜をあけろ」


 言われて結界を、一枚はずす。



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