『 穴 』
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勝手なまねを ―――。
足元のそれが連れ帰った『鳥』をつかみよせ、握りつぶせば白い紙は燃え上がる。
黒い闇に同化する男は、燃え尽き固まったそれを、煮立つそこへと投げ入れた。
グギョッブ ゴゴゴゴブ
足元が揺れ、苦しげな音と泡が沸き立った。
「 ―― わたしが、与えるものでは、不服か?」
黒森のはずれに大きな『穴』をあけ、そこで《土釜》の術をはじめた男が、『穴』を満たす、どろりと黒い『モノ』に問う。
五重に張った結界の中、それが、ぼこり、と揺れた。
フ フク フフクカ ダ クダ タリ
タリナイ イ ヨ ヨコ セ
「――ふん。足りないだと?」
ハラ ヘル ヘルルヘ
ヘッタリ タ タリ ナナイ
そうだ。
その飢餓感こそが、大事なのだとホムラはほくそ笑む。
「 ―― たしかに、そこまで大きくなれば、餌も多く必要だ。 だがいいか?おまえを創りだしたのは、このわたしだ。 ――― おまえは、わたしの『術』だということを、教えてやろう」
懐から出した木の札を、足元の『穴』へと投げ入れた。
飲み込んだ『穴』が、ぼこぼこと小さく泡をふいたと思えば、いきなり狂ったような叫びと泡をたてはじめた。
『穴』の中身が、火を抱え、橙色の火の粉をとばす。
「 ―― いいか?腹が減ったからと、勝手なまねをするなよ。 待っていろ。おまえはわたしが与えるものだけを、餌にしていれば良いのだ」
ぼこりと泡を吐き出した『穴』は、消える気配もない火を抱え、
―― 震える。




