伍の宮のみんな
現れた新しい景色には、立派な社があった。
「あれは、・・・宝物殿か?」
セイテツの言葉にシュンカがこたえた。
「―― この『中』にいた人だと思うのですが、さきほど、耳元で教えてくれました」
「・・・ってことは、隠したかったのはこの宝物殿で、しかも、この《ゆがみ》って・・・」
『境』のあとを踏み越えれば、耳鳴りをおぼえるような不快な『気』におそわれる。
社にあしをむけた絵師は、ぼんやりと暖かくなった懐のものを押さえた。
先についた坊主が何の躊躇もなく、片手で社の扉を開け放つ。
「―――なにも、ねえ」
社の中の本殿に祀られてあるはずの、『箱』がない。
祭壇はあるのになにものっていない。
「・・・存神が、出されたって・・ことか?」
「出されて、もって行かれたんだろうな」
シュンカの『気』と、同じように ―――。
「 決まりだな。・・・・あの、西の馬鹿が、土釜をやってるんだ」
ふう、と息をついた元神官は、額をおさえ、坊主と子どもを見て言った。
「・・・なあ、スザク、おれも、あの禁術を、見たことはないんだが、年寄りの神官の話を聞いたかぎりじゃ・・・・」
片腕にシュンカを抱える坊主をみやった絵師は、ここであらためて息をととのえ、「おまえ、一度シュンカとホウロクのところへ戻れ」と命じた。
あン?といつものように眉をしかめた坊主の代わりに、こどもがセイテツをきつくみすえていいはなった。
「いやです。―― おれが餌となれば、きっとあのホムラという男も現れるでしょうし、そうすれば、お二人で、あの黒鹿に頼まれたことも成せるはずです。―― もし、まだ生き残っている仲間がいるのならば、 どうか、助けてあげてください。 ―― それに 、」
シュンカが自分をかかえる坊主の顔をのぞきこみ、おれたち伍の宮のみんなは、いっしょに戦うのですよね?と確認する。
セイテツの懐にあるビンが、ぼう、と温まる。
シュンカにまとわりついていた、いやな『気』が、一気に散った。




