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おとぎばなし ― 鬼哭(きこく) ―  作者: ぽすしち
吟(なく)の章

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23/71

伍の宮のみんな



 現れた新しい景色には、立派なやしろがあった。


「あれは、・・・宝物ほうぶつ殿か?」

 セイテツの言葉にシュンカがこたえた。


「―― この『中』にいた人だと思うのですが、さきほど、耳元で教えてくれました」


「・・・ってことは、隠したかったのはこの宝物殿で、しかも、この《ゆがみ》って・・・」



 『境』のあとを踏み越えれば、耳鳴りをおぼえるような不快な『気』におそわれる。


 社にあしをむけた絵師は、ぼんやりと暖かくなった懐のものを押さえた。


 先についた坊主が何の躊躇もなく、片手で社の扉を開け放つ。



「―――なにも、ねえ」


 社の中の本殿に祀られてあるはずの、『箱』がない。



 祭壇はあるのになにものっていない。


「・・・存神たもつがみが、出されたって・・ことか?」

「出されて、もって行かれたんだろうな」



    シュンカの『気』と、同じように ―――。




「 決まりだな。・・・・あの、西の馬鹿が、土釜つちがまをやってるんだ」

 

 ふう、と息をついた元神官は、額をおさえ、坊主と子どもを見て言った。


「・・・なあ、スザク、おれも、あの禁術を、見たことはないんだが、年寄りの神官の話を聞いたかぎりじゃ・・・・」

 片腕にシュンカを抱える坊主をみやった絵師は、ここであらためて息をととのえ、「おまえ、一度シュンカとホウロクのところへ戻れ」と命じた。



 あン?といつものように眉をしかめた坊主の代わりに、こどもがセイテツをきつくみすえていいはなった。


「いやです。―― おれが餌となれば、きっとあのホムラという男も現れるでしょうし、そうすれば、お二人で、あの黒鹿に頼まれたことも成せるはずです。―― もし、まだ生き残っている仲間がいるのならば、 どうか、助けてあげてください。 ―― それに 、」


 シュンカが自分をかかえる坊主の顔をのぞきこみ、おれたち伍の宮のみんなは、いっしょに戦うのですよね?と確認する。



 セイテツの懐にあるビンが、ぼう、と温まる。


 シュンカにまとわりついていた、いやな『気』が、一気に散った。




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