人でなし
ケイテキは、己を人間だと思っている。
ゆえに、人間でないものを、理解しようとは思ってもみない。
ホムラが自分に従っているのは、禁を破った神官を『買い取る』と天帝に申し入れ、ミカドがその場でいつものように、「そりゃいい。ホムラは今から西の将軍に従え」と“くちだし”したからだ。
天帝の言葉は絶対だ。
いくら人間ばなれしたホムラでも、その枷から逃れることはできない。
にやけた、整いすぎる子どもの顔を思い出す。
あれほどの『力』がありながら、なぜ、人間を支配しようとは思わないのか、わからない。
わからなくて当然。
――― あれは、人ではない。
ふいに、足元にトカゲが走りよった。蟲は、何も考えないように、そこで止まり、顔をあげ向こうをみている。
「 ――― 」
足をあげ、考えることもなくそれを踏み潰す。
ケイテキは、蟲が嫌いなのではない。
―― 己が、人だということを、よく知っているだけである。
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