表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとぎばなし ― 鬼哭(きこく) ―  作者: ぽすしち
吟(なく)の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/71

領域



「・・・あれを・・やりたいと、持ち出したのは、ケイテキ様でございましょう。それに、黒鹿のおかげで、ずいぶんと出来が早まる予定でございます」


「たしかに・・・・だが、黒森は、ただの森ではなかろう? それぐらいはおれも心得ておる。 いいか?ホムラよ。おれは確かに欲深いし、強引だ。だがな、自分の首を絞めるような、間の抜けたことだけは、するつもりはない。 天宮に行って、思ったぞ。おれは、人間の領域で威張るのが精一杯だ。あんなやつらがこっちにかかわってこないから、おれは好き勝手していられる。―― おまえが何を考えているかはわからんが、『領域』を間違えるなよ。 お前は西の人間だ」



 ケイテキは着物の裾をひるがえし、本邸に戻ることにした。


 本邸から離れて建つホムラのこの領域を訪れたのは、今が初めてだ。


 引き取ったときにあの男が所望したのは、『円』をなす、自分だけの空間だった。




 入ったとたん、床に並ぶ、たくさんの大瓶おおがめに顔をしかめることになった。


 全てに木蓋きぶたがのせてあったが、ときおりそれが、ゴトリと動くものがある。


 薬のような、鼻の奥を刺激する独特の香りが、建物全体に染み付いていた。


 灯りは、水を張った盆が乗せられた大きなテーブルの上の小さなロウソク。


 それが『円』の中身のすべて。



 見渡したかぎり、人の暮らしというものが、まったく目に映らなかった。

  



  ――どこで、眠るのだ?

 


 あの男を拾って五年以上たつが、なぜ禁を犯しても、女の堕胎などをしていたのか、いまだにその理由を知らない。


  ――― 聞く気も、ないのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ