問題
「 ―― ヒョウセツが、鳥を寄越してね。ああ、コウセンも絡んでるんだろうけどさ。珍しいよねえ。あの二人が人間のことでぼくに頼みごとがあるなんて 」
語り始めたホウロクは、短い左の角をなでる。
「 セリも、ぼくの角がほしいなんていきなり言い出すしさあ・・・。天宮がなんだか騒がしいのは知ってたけど、その原因が人間の子どもだなんて、ちょっと信じがたかったよねえ 」
いいながらまた角をなでると、ぼくがこのかたちなのは、シュンカが原因だよ、とため息をつく。
「 さっきの、コウセンとヒョウセツの頼みごとでね。 きみたちがこちらに向かってくる間、シュンカから流れてくる『気』を、ぼくでせきとめてほしいって言われたのさ 」
「せきとめるって? 水を、止めるようにってことか?」
「 人間の『気』が止まるときは、死ぬときだ。たとえ『蓋』をしていても、それは漏れて流れているのさ。その、漏れでた『気』を、ぼくに止めろといってきた。西にいる男がこの子の『気』を狙っているって聞いたけど、それってあの、森を焼いた男だろう? 」
「ホムラだな」
「 名など知らないが、とにかく、そいつのほうに流れないよう、ぼくにそれを止めろってわけ 」
「え!?じゃあ、黒森に入ってシュンカの様子がおかしくなったのは・・・」
「 ああ、それはぼくのせいじゃないよ。―― ぼくは、きみたちが天宮からこちらにむかい始めたときから、あの子の『気』を集めて止めている。・・・だけど、漏れ出るっていう量じゃあないよね。途中、役神が存神になっただろ? 」
「―― 完全にじゃねえがな」
スザクのそれに、運が良かったね、とうすく笑う。
「 先に言っておくよ。そのビンに戻した役神の処理なんて、ぼくに聞かないでほしいね。――ただ、それはしばらく、そのままにしておいた方がよさそうだ。それに、坊主ならわかってるはずだよ。 あの子の『気』の多さは、異常だ 」
「蓋があるし、天宮から出ることもあまりねえんだ。問題ねえだろ」
「 存在自体が問題だよね 」
「おれの従者だ。おれが責任もつ」
「・・・すざく?」 セイテツは耳をうたがった。




