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おとぎばなし ― 鬼哭(きこく) ―  作者: ぽすしち
啾(なく)の章

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13/71

大堀のオオシマ


 抱えられたシュンカが小さな息をもらすと、こてん、と頭を男に預けた。


「 あらま。耐えられなかったか 」


 気を失った子どもをのぞきこみ軽く言う『黒鹿』に、セイテツが口をひらきかければ、ずい、とスザクが前にでる。



「よこせ。おれの従者だ」



 面白そうに見た黒鹿が、それでも黙って子どもを坊主に渡す。

 そこからぐるりと丸く歩いて立ち止まり、さっと片手をあげた。


「 では、はいりまーす 」


 にこやかな男の声とともに、上から下へとおろされた手により、開いたそこへと一瞬で、のみこまれる。





「――っ、な、なんだ? ここって・・・まさか・・」

 黒鹿に招き入れられたそこから見えるのは、セイテツがよく見知った場所だった。



 周りをかこむ緑色の水。そのむこうに見える街の大きな建物。

 

 『ここ』は、下界の色街にある、《大堀おおぼり》だ。


 そしてその堀の中に浮く、『オオシマ』とよばれる、取り残されたような陸にいた。



「 この場所は、人間の『よどみ』が強いからね、つなげやすかったし、隠れるのにいい場所さ 」


 ホウロクは、堀のまわりの人間からはぼくたちは見えないから、と堀端で釣りをする人間に手を振って見せた。




 島の真ん中にはからやしろがあり、先をゆく鹿の長が、雨風しのげて便利だよお、と入ると中で、かたまりになった黒い影が怯えたように、いっせいに身を起こした。



「 みんな、大丈夫。 この人間は、セリの仲間だ 」


 からだを起こしてつぶらな瞳をむけるそれらは、セイテツが想像していた通りのただの黒鹿たちだった。

 黒く、つややかな毛並みに、数頭は、大きさは違えど、ホウロクとおなじ角をもっている。

 


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